台風報道の裏側で
史上最強といわれた台風22号は東京を通過し、そのピークは過ぎた。サッカー、F1などのスポーツの中止、鉄道、航空の運休だけでなく、がけ崩れ、避難など、影響は大きなものだった。JR新宿駅やお台場から繰り返される状況報道は、「傘を持てないほどの強風と暴風雨」を伝えたが、その裏側で何が起きているか、想像力を深める必要があると思う。
少なくとも90年代最強といわれた今回の台風。90年代に増えたものは何だったのか。警視庁発表によれば、自殺者は15年前に比べ、1.5倍をこえる3万4千人と大幅に増加している。ホームレスについては、東京都が10月6日に「路上生活者概数調査の結果」を公表したが、ここ数年でカウント数の上では変わっていない。しかし、3年前には女性ホームレスは142人だったが、今回は193人と激増しているように、深刻さは増している。
私の実感では、動ける人のなかでは駅や路上に定住しないケースが多くなっていると思う。年に十数度、新宿西口の都庁に通うなかでも、テントに住まず、屋内で風雨をしのぐ姿が目立つ。さらに、私は都心と市部の中間点にあたる地域に住んでいるが、帰り道の街道で、マンションのそばで休む姿やごみをあさる状況を目にするようになった。明らかに、その地域は広がっているし、カウントされない人も多いはず。
東京都は自立を促す施設の整備をはじめたといい、その成果を強調している。さらに、公園でのテント住まいをやめさせる条例を全国で初めて制定する動きも都庁内にはあるという。自治体がカップ麺などの支給を「財政難」「自立支援への転換」などを理由に打ち切ることも主流になりつつあるようだ。
今回の台風にしても、彼らはどうやって情報を集め、どう対処できたのだろう。「自立支援」の施策と情報は十分なものになっているのか。ボランティア団体の炊き出しが「財政難」を理由に縮小されるなか、公的支援のあり方がもっと問われるべきではないか。台風報道の裏側で、一番の被害者を「自己責任」で片づけないでほしい。
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確かに、関東に上陸した中では最強と言われる台風の報道の裏側で、もっと目を向けていかなければならない問題ってたくさんありますね。
平和の問題でも、やれ北朝鮮だテロだと騒いでいる間に、足下でたくさんの人が命を失っていることに目は向かないのか。自殺だからと「自己責任」にしてしまうのでは、問題は解決しない。ホームレスに「自立」を促されても、自立するだけの収入がいくら頑張っても確保できない状況ではどうしようもない。一見聞こえの良さそうな言葉の裏側に潜む「責任放棄」に、私たちは敏感にならなければいけませんね。
投稿: KEN-NYE | 2004.10.10 00:43