「夕凪の街 桜の国」 こうの史代ファンページ掲示板を読んで
昨年10月に単行本化されたコミック「夕凪の街 桜の国」(こうの史代 双葉社)に何度も涙を流したあと、その反響の大きさには驚かないできた。もっと騒がれてもいいとさえ思っている。「はだしのゲン」とはタイプの違う、静かな少しずつ少しずつ積もるせつなさと悲しみ、そしていのちの尊さ。核兵器と戦争、いのちとくらしを、日常の視点で問われる展開に感動を重ねてきた。
その読み手に伝わるせつなさとあたたかさ、著者・こうの史代さんのファンページの掲示板を拝見して、気づかされた。驚いた。
原水爆禁止運動の分裂を乗り越えられないできたという歴史から、このコミックを「政治利用」するなという声が書き込まれて、以降の展開を心配したが、「原爆の問題は、特定の個人や団体が独占していいものではありません。だから同様に、特定の団体(に所属する個人個人)が知ろうとする権利を奪っていい筈だってないのだ」という、こうのさんのメッセージが持つ説得力に圧倒された。
原水協通信2月号の電話取材を受けたなかで、「核兵器はよくない」とはっきり言ってしまったことを悔やみ、「夕凪の街 桜の国」のねらいを、「原爆を少しでも身近に感じて貰う事」として、核兵器の善悪を「読者がそのあと判断する事」、「わたし自身の判断もほとんどの読者と同等に雑多に扱われるべき」と言い切っている。一人ひとりを本当に大切にしている。だからこそ、被害者の数や被害の大きさ、悲惨さに焦点をあてるのではなく、一人の女性の体と心に何が起こったのかを描くことができたのだと思う。
立場も表現も角度も違うファンの書き込みに、「しかし、皆さん本当に親切で嬉しいです。もう一回、どうも有難う」としめくくる著者。私もそこに何度も書き込んだ経験のあるファンとして、心からありがとうと返したい。
今回の件で批判もされた原水協、その機関紙「原水協通信」1月号に、私はこの本の紹介を書かせていただいた。本当にうれしい。批判をした人も私も、原水協通信に掲載しようと思った人もみんな、「夕凪の街 桜の国」のファン、こうの史代さんのファンに変わりはないはず。さまざまなファンを引きつけるコミックと著者のこと、もっと多くの人に知らせたい。
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※本の紹介「夕凪の街 桜の国」(2005/1/6)
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