30人学級は、「共産党のごくごく限られた支持者の意見」?
石原都知事が就任したときに労働組合の職員になりました。それからは東京都議会本会議をほぼ傍聴しています。先日、3月1日の都議会代表質問で、30人学級についてのやりとりがありました。全国的に少人数学級の動きが広がるなかで、47都道府県のうち、導入しないのは東京だけ(一部教科について習熟度別の少人数指導のみ実施)になりつつあるという状況のようです。
以下、2005年3月1日の東京都議会代表質問でのやりとりです。東京都議会ホームページから関連部分を転載。
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◆渡辺康信都議(共産党)
(中略)最後に、都民の切実な要望である三十人学級についてです。
今年度少人数学級を実施していない五都県のうち、佐賀県、石川県が昨年、岐阜県が二月の予算内示で来年度実施を表明したため、未実施は香川県と東京都だけとなりました。しかもつい先日、香川の教育をよくする会が少人数学級の実施を求める七万八千人の署名を集めて、三十人学級実現を要請したのに対して、今後の方向を改めて検討する姿勢を示したと伝えられております。
また、二月二十三日、中山文部科学大臣は、衆議院で、我が党の石井郁子議員の質問に、集団的な行動を学ぶにはある程度の数は必要ではないかという認識だったが、少しでも少人数、クラスの人数を減らす方向にいかないといけないと思っていると、文部大臣として初めて少人数学級の必要性を認める注目すべき答弁を行いました。
知事、いよいよ三十人学級の実施はもちろん、少人数指導との比較検証さえ拒否し続けているのは、文字どおり東京都だけになろうとしているのであります。
昨年の第四回定例会で、横山教育長は、三十人学級にした場合、十五人と十六人の小規模な学級が増加することで、学級内の人間関係が固定したり子ども同士の切磋琢磨する機会が不足するとして、生活集団としては望ましくないと答えています。
ところが今、急速に少人数学級が全国に広がる中で、どこでも、教育長の答弁とは全くあべこべに、すばらしい変化が日々新たに起きています。
我が党は、すべての道府県にアンケート調査を実施し、四十二道府県から回答を得ました。
その結果、少人数学級実施の効果を問う質問には、未実施で調査検討中の数県を除き、すべての回答の中で、学習面はもちろん生活面でも大きな前進が見られたことが書かれています。
例えば生活面での変化として、生活や学習のしつけが身につく、授業中席を離れたり教室から出なくなった、朝礼や当番など集団生活への適応が早くなった、学校が楽しいという子どもがふえたなど、大いに歓迎されており、保護者にも、すべての学年でやってほしいなどと、期待が広がっている様子が手に取るようにわかります。
全国に先駆けて三十人学級に取り組んでいる山形県では、不登校児童が二割以上減ったこと、一人の児童の欠席日数が年平均四日から三日以下に減ったことなどを明確な成果として報告されているのです。
東京でも、校長を含めた多くの教員関係者は、少人数学級の子どもは、何よりも担任教員が、集団生活でも個別指導でも子ども一人一人の個性に応じた指導が充実でき、むしろ切磋琢磨が保障されるようになると述べています。小一プロブレムなど、これまでにないさまざまな問題を抱えた子どもたちを見れば、当然の指摘ではないでしょうか。
子どもの社会性を養うとか切磋琢磨が必要などの集団生活の指導が、少人数学級の中でこそ充実できるという報告が全国から続々と寄せられているのです。全国での少人数学級の実践、経験の成果を大いに学び、分析して取り入れるべきではありませんか。お答えください。
百二十万人を超える都議会請願に込められた都民の世論を初め、まさに都民的な要求となっているのです。そして、どの県でも最後は知事の決断で、三十人学級は実現の道が切り開かれております。
知事、ぜひ圧倒的多数の声である三十人学級実現に向けて取り組みを開始すべきではありませんか。答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。(拍手)
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◆石原慎太郎知事
(中略)三十人学級についてでありますけれども、これは都民の切実な要求といわれましたが、私はそう思いませんな。これは、共産党のごくごく限られた支持者の意見であって、これまでも答弁しているとおり、学級編制基準をどう定めるかは教育行政の根幹にかかわることであり、法的にも所管する教育委員会がその専門的な立場から判断すべきものであります。
教育委員会が、児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、生活集団としての学級について一定規模が必要であるとする点については全く同感でありまして、学級編制基準を四十人とする教育委員会の判断は、ごくごく妥当であると考えております。
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◆横山洋吉教育長
全国での少人数学級の成果を分析し、取り入れるべきとの指摘についてお答え申し上げます。
東京都教育委員会としましては、これまでも、学級編制等に関して国や他の道府県の情報収集を行いました。他の道府県での少人数学級の取り組みは承知しておりますが、少人数学級の教育効果に関しまして、平成十六年に公表されました国立教育政策研究所の調査で、現行規模学級、少人数学級及び少人数指導を比較してみまして、学力の形成においては少人数指導が有効であるという結果が明らかになったところでございます。
学校におきます学級といいますのは、学習集団としての機能と生活集団としての機能をあわせ持つものでございますが、社会性を培う生活集団としての教育効果を考えた場合、教師と児童生徒との関係、無論これも大事ではございますが、それだけではなくて、児童生徒同士が相互に触れ合い、多様な人間関係を通して成長するという面も重視すべきでございます。
また、これは、ある民間の教育者から伺った話でございますが、学級には当然、インフォーマルなグループが形成されますけれども、あるグループにいられなくなった子どもが出た場合に、先生が他のグループへ入れるような努力をしますが、それが三つですとどうしても入りにくい。これが五つのグループがありますと容易に入れることができる。こういう実証的なあれもあるそうでございます。そうした観点から考えた場合には、やはり学級には一定の規模が必要であると考えております。
ただ一方、その学習集団として、これは学力向上の問題につながりますが、学習集団としましては、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できるよう、習熟の程度等に応じた少人数指導の充実を図っているところでございまして、今後とも、学級編制基準につきましては、義務標準法に基づきつつ、基礎学力の向上に配慮したきめ細やかな指導を行っていくため、少人数指導の充実に努めてまいります。
(転載おわり)
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私、中学時代に学級崩壊や授業ボイコットなどいろいろあって、やっぱり少人数学級の方がいいと思っています。最大40人というのは。。。考え方は違っても、30人学級を求める声を、「これは、共産党のごくごく限られた支持者の意見」と言い切る石原都知事の姿勢には強烈な違和感を覚えます。
【追記】関連記事を書きました
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今日PTAの運営委員会があったですよ。
校長センセいわく。「このままだと新入生3クラスになるかもしれません。きびしいですねー。」
121人ぎりぎりなんですって。
クラスが一つ減るってことは、担任をする先生が確実に1人減るってことで、教科の面でも部活の面でも、クラス別対抗のさまざまな行事にも影響大なのだそうです。
「いいじゃないですか、40人だって」というおかあちゃんは、ひとりもいませんでしたよ。
ついでに、保育所最低基準の5歳児30対1、幼稚園の35対1もなんとかしてくれい。
投稿: おりがみ | 2005.03.09 22:46
何が何でも40人学級がいい、ということみたいで。「できる子」も「できない子」もいっぱいの中で競争させる。その競争にもとづいて習熟度別にわかれて授業する。東京都はその路線をつきすすんでいます。ほかでは何かしらの努力がされていて、都は違う方向での努力をしている。これが今の状況でしょー。
投稿: tamy | 2005.03.09 23:01
初めまして。トラックバックさせていただきました。東京はたいへんですね。私は北海道ですが「何かと東京のまねをしたがる」傾向がありますので憂慮しています。
投稿: 学校へ帰ろうの管理人 | 2005.03.21 17:00