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2005.04.09

核実験 疑似体験する 博物館!?

 今年で被爆・戦後60年。原爆症の認定を求めた被爆者の集団訴訟の関連や改憲の動きなども含めて、憲法・被爆・戦後に関する報道が増えているように思います。全体としてはそれでも少ないですが。

 先日、ある会議で年配の方が教えてくれました。

 「TBSのニュースで、アメリカのラスベガス核実験疑似体験する博物館ができたことを取り上げてたらしいのよ

 (-_-;)私、知りませんでした。報道もそういう博物館も。

 で、調べてみました(・o・)。

 確かに、報道されていました。3月29日、NEWS23などTBSニュースで。リンク切れになっていますが、内容として根拠を示すために掲載します。

*** 2005/3/29TBSニュース ***

「核実験博物館」ラスベガスに開館

 核実験の博物館がアメリカ・ラスベガスにオープンしました。中には「核爆発の威力が体験できる」というアトラクションさながらの展示もあり、被爆の悲惨な実態を知る日本とアメリカの核兵器をめぐる考え方の違いが浮き彫りとなっています。

 ラスベガスにオープンした「核実験博物館」では核実験だけでなく、核兵器の開発以来の歴史についてなど豊富な資料とともに幅広い展示がされています。
 
 日本に関連したものは1954年の水爆実験で被爆した「第五福竜丸」についての簡単な展示がある他、広島、長崎に投下された原爆については「核爆弾の使用こそが犠牲者を最小限に抑えて、戦争を終わらせる方法だと結論付けられた結果、2つの核爆弾が軍事産業の拠点に対して落とされた」といった言及がされています。
 
 核兵器がアメリカの発展と世界の平和にいかに貢献したのかを誇らしげに主張する展示で大部分が占められていますが、その中でも博物館の目玉と言われているのが劇場です。核爆弾の威力を体験できるようにと椅子が揺れ、前方からは空気が出る仕組みになっています。
 
 映像にあわせて振動する椅子、大音量の爆発音、噴き出す風・・・。「グラウンドゼロ」と名付けられたこのコーナーはスクリーンに映るおぞましい映像を除けば、まるで遊園地の体験アトラクションです。
 
 こうしたショッキングな内容があるにもかかわらず、博物館の展示は中立的ですばらしいという反応が目立ちました。
 
 「とてもよい展示だと思います。核の歴史は私たちの歴史の一部ですし、全ての人が見るべきだと思います」
 「すばらしい博物館だと思います。核実験を支持している人と反対している人との双方の見方がわかるようになっていますから」
 
 確かにアメリカ人の視点から見た中立的な立場で核の歴史をまとめたものかもしれません。しかし、核兵器を体験アトラクションにするような、あまりに楽観的な姿勢は若い世代にどのように映るのでしょうか。
 
 「(グラウンドゼロは)とってもかっこよかったわ!だって、動いて椅子が揺れて、まるで爆発の現場にいるみたいだったもの。すごいわ!」
 
 こうした核の娯楽化を象徴しているのが土産売り場です。キノコ雲を扱った商品がずらりと並んでいる他、広島と長崎に落とされた原爆のキーホルダーまでもが売られているのです。
 
 「(Qなぜあのような土産物を?)アメリカ人は時として恐ろしい出来事をジョークにする傾向があります。確かに適切なこととは言えませんが・・・」(核実験博物館 ジョンソン館長)
 
 日本人の感情を逆なでするのは本意ではないとして、館長は「商品の陳列を再検討する」と話しますが、「博物館を維持していくため、売れる商品を置くのはやむを得ない」という本音も漏らしました。
 
 原爆が投下されてから今年で60年、こうした博物館が造られたという事実は核兵器をめぐる日本とアメリカとの根本的な考え方の違いが長い時間を経た今も何も変わっていないという現実を象徴していると言えそうです。(2005/3/29TBSニュースより)

***

 で、どんな博物館なのか。

公式ホームページはこれ!

THE ATOMIC TESTING MUSEUM(核実験博物館)

下記では観光スポットとして掲載されていたり、

原爆博物館(ミスターベガスのラスベガス大全 観光スポットより)

こんな報道もあります。

新設『核実験博物館』をめぐる、さまざまな思い(上)(2005/3/17HOTWIRED)

新設『核実験博物館』をめぐる、さまざまな思い(下)(2005/3/18HOTWIRED)

博物館に見られる核使用に反省のないアメリカ政府の姿勢は具体的な方針にあらわれています。下記に。

CTBT発効促進を拒否 NPTで米交渉方針判明(2005/4/6共同通信)

このようにブッシュ政権の方針を示す報道もありますが、

一方で、

NPT強化の決議案提出へ 米有力議員、核軍縮求める(2005/4/6共同通信)

アメリカ有力議員の動きや、

核兵器保有:米国民3人に2人がNO!米世論調査(2005/4/1毎日)

世論の動きを示す調査も伝えられています。

広島・長崎両市長を中心にした動きも積極的に展開されています。

核保有国に軍縮促す…平和市長会議が独自条約策定へ(2005/4/8読売新聞)

 秋葉忠利・広島市長が会長を務め民間活動団体(NGO)「平和市長会議」が独自に「核兵器禁止条約」を策定し、核保有国に軍縮努力を求める方針を固めたそうです。「平和市長会議」には世界763都市が加盟しています。
 5月2日からアメリカのニューヨークで核拡散不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれますが、期間中に各国代表団などと協議して、会議終了後、独自の条約案をつめる作業へ。

NPT再検討会議:長崎市長、訪米前に非核兵器地帯条約締結国会議も出席へ(2005/4/8毎日新聞長崎版)

 博物館に行ったわけでもないし、ニュースを映像で見たわけでもありませんが、アトラクション、テーマパーク的な扱いは、もっと問題にされていいのではないでしょうか。

 被爆60年のこの年に、こんな博物館が新設され、何も言えない日本政府とこのままの日米関係が許されるのか。私たちに問われていると思います。

 唯一の被爆国に生きる私たち、以下のような歴史と被爆者の声を、どう生かしていけるのでしょうか。

ヒロシマ・ピース・サイト(広島市)

長崎原爆資料館(長崎市)

原爆の図 丸木美術館

日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協) ※「原爆と人間展」パネル

【参考にさせていただいたブログ記事】

アンチ・リアリティ-無邪気で無神経な核実験博物館(Manigiare!Cantare!Pensare!)

核兵器も娯楽にしてしまうの?(nanayaのひとりごと)

 

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コメント

tamyさん、トラックバックありがとうございました。

核実験や核爆弾投下による被害者の声はとり上げられることなく、推進する側の人間は核兵器の未来のためにお金を使っています。その大金を被害者救済に使おうとしないのは、「自分に降りかからないこと(被害)は想像も及ばない世界のできごと」だからなのでしょうね。

想像力のない人間こそ怖い存在です。

靖国神社に「南京虐殺を疑似体験できるアトラクション」をつくったら、どうなるんだろう・・・。なんて、考えてしまったです。
「パールハーバーが体験できる」なんてのもどうでしょう?

「ベトナム北爆が体験できる」「ナチスの強制収容所が・・」「天安門事件が・・」「光州事件が・・」「フォークランド紛争が・・」「9・11が」おお、神よ。

おりがみたぶん耐えられません。

はっきりいいます。もはや戦後ではない。戦前です。
おりがみはこんな21世紀がくるなんて、こどものころは考えもしなかった。
世界中の人が仲良く暮らせると思っていた。

我が子の世代にどう申し開きをすれば良いのやら・・・。そんなおもいを抱えながら、仕事をし、野球を見ている日々なんです。

まあ、ぼちぼちやるしかないんだ。うん。

おりがみは、9条と球場がすきなのだから。

nanayaさん、トラックバックさせていただきました。検索かけて、おかげでこのこと知ることができました。

地球の温暖化など言われていますが、想像力、どんどん冷たく小さく狭くなっていっているように思います。

60年、なかよくしてきたつもりでいたのに、地球博とかでマンモス飾っている間に、同盟関係にある国で、核の博物館ができてたりして。

想像力とともに大切なのは違和感をきちんと表現することだと思います。検索して記事を読むことができて、違和感を確認できたこと、nanayaさんの違和感のおかげです。

違和感の連鎖がおかしいことをなくしていく、とまではいかなくても、減らしていく、改善していくことにつながっていくと思います。たとえ、国境をこえても。

疑似体験の世界、広がってしまって誤った想像力が生まれているように思います。それが子どもの世界にまで入り込んでるってことを今日あらためて思わされることもありました。それはまた書きますが。

殺してしまった軍人がずっと引きずるもの、その疑似体験はどうなるんでしょうね。数十年過ぎても夢に出てくる人たちの。

ほんとに情けないですね。


CTBT発効促進を拒否 NPTで米交渉方針判明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050406-00000171-kyodo-int

日本政府も今回はアメリカの方針を変えさせようと動いているようですが、日中・日韓関係で起こっていることよりもむしろ重大なのではと私は思ったりしています。

私はアメリカに8年程在住しています。先日旅行でラスベガスに立ち寄ったので、せっかくなので核実験博物館を見て来ました。TBSの報道は当時ウェブサイトで見ましたが、今回の訪問時にも「どんなアトラクションがあるのか」と期待していたのですが、結局のところ、報道で見た印象とはかけ離れたものでした。

この報道で「核爆発の威力が体験できるアトラクション」と言われているものは、実際には「核実験の歴史」の15分程度のドキュメンタリー映画で、その爆発シーンで重低音の爆音が出るだけで、これは単に映画館の音響システムと同レベルのもので、椅子が動いたり揺れたりということはなく、とても「体験アトラクション」と言えるような代物ではありませんでした。風が出たと言っても、気が付くか付かないか程度のもので、それも確か映画のオープニングの一箇所のみでした。

記念グッズには、全体的には「実験で吹き飛ばされる建物」「原子のデザイン」「実験場の地図のイラスト」など核実験場にまつわるものをデザインしたもので、きのこ雲をデザインしたものはごく一部でした。

「広島と長崎に落とされた原爆のキーホルダー」とは、恐らく「広島・長崎と同モデルの原爆の、ネバダの実験場における実験の際のきのこ雲」であり、TBSの表現は「広島・長崎投下の際のきのこ雲の写真を基にデザインしている」と誤解されそうな表現を敢えて使っているように思えます。

実際にそこに行き、自分の目で見たのですが、TBSの報道は、アトラクションとグッズのみを集中的に誇張や曲解も含めて書かれており、意図的に視聴者に悪感情を持たせるようなものであったという印象です。確かに私自身、日本人の立場として、原爆に関しては複雑な感情があります。しかしながらTBSの視点は著しく主観的であり、意図的に情報を操作し視聴者の反感を煽るというのは、公正中立であるべきメディアの道に反したものだと思います。

私の印象としては核実験資料館は、第五福竜丸やアメリカ国内の核実験反対運動、実験に関わった兵士の被爆症も取り上げ、また冷戦構造において核開発競争が避けられないものであったなど、核開発のネガティブな面にもかなり触れているので、スミソニアン博物館(ワシントンDC)の「エノラ・ゲイ」展示の「原爆投下を徹頭徹尾正当化したもの」に比べて、遥かに中立でましなものの印象です。ただし広島・長崎の死者数の表示がなく、被爆状況の写真が殆どないとか、第二次大戦に関する記述が全体的に少ない、現代の対テロ戦争に関しては正当化しているなど、やはりアメリカの限界というものも同時に感じました。

私が8年前に「エノラ・ゲイ」展示に行った時は、「原爆は結果として多くの日本人
を救ったのだから正しかった」という、退役軍人組織にコントロールされた、余りに
も短絡的で一方的な主張で塗固められていて、ある種の憤りに近いものを感じました。しかしながら核実験博物館に関しては、そういった次元のものではないと思います。

実際、全ての展示の説明文を丁寧に読んでいたら、とても一日で見切れる量ではないので、私も結構飛ばし読み状態でした。実際に取材をした方の日本語観光ガイドのサイトがありますが、ここに詳しいことが書かれています。私が見たのもこういった感じです。
http://www.lvtaizen.com/sight/html/atomic.htm

カジノで有名なラスベガスですが、何でラスベガスに核実験博物館があるのかと思ったら、ラスベガスは実験場に隣接しているのですね。私もカジノで少し遊んでちょっくら稼いで来ました。

***
※いただいたコメントが文字化けする関係で削除したあと、直接メールをいただいたものを掲載させていただきました。(tamy)

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