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2005.05.08

NPT(核不拡散条約)再検討会議をめぐって  唯一の被爆国の政府と私たちに問われているものは

 私は4月29日に成田を出発し、NPT(核不拡散条約)再検討会議の要請団の一人として、5月5日に帰国するまでの期間をニューヨークで過ごした。前回(2000年)に核保有国も含めて合意した核兵器廃絶の「明確な約束」の実行を求めるためだ。

 広島市長やNGOなどが100万人デモをとよびかけた5月1日の行動。主催者発表で4万人(私の目算では1万数千人)にとどまったことは、アメリカ国内の世論の厳しさを示した。というのは一面的な見方だろう。

●参考 

被爆60年…核廃絶なぜできぬ NY、4万人訴え(2005/5/2西日本新聞)
<反核集会>NPT再検討会議を前に4万人が訴え NY(2005/5/2毎日新聞)

 5月8日の共同通信の配信によれば、8日付のニューヨーク・タイムズは社説で、核拡散防止条約(NPT)再検討会議で米政府が指導力を発揮していないと批判したという。4日付のワシントン・ポストも同様の批判を社説で展開。米国を代表する2大紙がブッシュ政権批判で続いた。論調や世論は少しずつ動いていると見るべきだろう。

●参考 米、NPTで指導力欠如 NYタイムズが社説(2005/5/8共同通信)

 また、私が4月30日に参加した日本原水協の公開シンポジウムでは、エジプト大使やアメリカの活動家らが持論を展開。エジプト大使は、核保有国、特にアメリカの単独行動主義を批判し、核兵器の廃絶の必要性を強調した。

●参考 NPT再検討会議 実質討議入れず 開会1週間、異例の展開(2005/5/8産経)

 このエジプトの姿勢が強硬すぎるという意見もあるだろうが、核兵器廃絶を積極的に求める新アジェンダ連合(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ共和国、スウェーデン)や非同盟諸国の調整がすすんでいくことを期待したい。問題は、それだけアメリカの核先制使用戦略がむき出しになっているということではないか。

 再検討会議が始まる前日、先制核攻撃の選択肢を温存していることが米軍の文書であらためて明らかになった。北朝鮮やイランなどによる生物・化学兵器攻撃の脅威への対抗策として、「限定核戦争」のシナリオが現実として戦略となっているのだ。

●参考 先制核使用の選択肢明記 米軍文書で判明(2005/5/1共同通信)

 ニューヨークに集まったのは、各国政府の代表や私たちだけではない。3日には、「核兵器廃絶のための緊急行動2020ビジョン」)を掲げ、2020年までの核兵器廃絶を求めている平和市長会議(111の国と地域の940都市が加盟)が会議を開き、80都市の市長が参加したという。国連のアナン事務総長も「多数の被爆者の出席を誇りに思う」と参加し、「市長会議の行動は私たちにとって重要だ。国連は世界中の市町村の意見と熱意を必要としている」と訴えたと報じられている。

 広島市の秋葉忠利市長、長崎市の伊藤一長市長は4日のNPT再検討会議で、核兵器廃絶を求め、演説した。日本のマスコミでもある程度大きく報じられた。各国の演説のあと、非公式行事として扱われたため、空席が目立ったというのが残念だ。

●参考

核廃絶強く訴え、広島・長崎両市長が国連で演説(2005/5/5読売新聞)

広島・長崎の思い届かず、大半空席 NPT再検討会議(2005/5/6asahi.com)

核廃絶 世界に訴え 長崎市長 NPT会議で演説 「黒焦げの少年に何の罪がある」(2005/5/6西日本新聞)

「核の現状、受け入れられぬ」=NPT会議で広島市長ら演説(2005/5/5時事通信)

核保有国「特権に安住」 NPT会議で市長演説(2005/5/5共同通信)

 奮闘する両市長の背中を押すのは、平均年齢が71歳をこえたといわれる被爆者の「ノーモア・ヒバクシャ」の声に違いない。国連本部で初めて行われた原爆パネル展を訪れた際に、被爆者に声をかけられた。「核兵器はなくなったとあの世で報告したいのです」という生の声は切実だった。私たちの団体の関連企画でも被爆者の思いは随所に語られた。

 
 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のメンバーがニューヨークで日本の国連代表部を訪れ、「(会議で)核廃絶に向けた期限だけでも確認してほしい」とした要請に、大島国連大使は「NPT体制は重大な危機に直面し、すぐに解決に向けた筋道が見えない」とし、被爆者らが求める核廃絶ではなく核不拡散への努力を強調したという。被団協の田中事務局長は、「被爆国の日本が核兵器の存在を許しているのは堪え難い」と語ったと言う。

●参考 核不拡散への努力を強調 国連大使が被爆者らに(2005/5/4共同通信)

 毎日新聞広島版は、被爆者の被爆者や支援する人々の切実な願いを、NPT再検討会議やそれに関わる行動にあわせて連日報道している。すばらしい企画記事になっている。東京にいて全国紙を読んでいてもなかなか伝わってこない。被爆者の願い、被爆地の思い、そこに被爆国の姿勢がかみあってこそ、核兵器の廃絶に前進するはずなのだが。今回ばかりはアメリカの説得にできるかぎりの努力を重ねるべきだ。対立をも辞さない強い姿勢を政府は見せてもらいたい。

●参考

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 思い届け「今こそ廃絶を」 /広島(2005/5/1毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 路上で小さな原爆展--日本被団協 /広島(2005/5/2毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 若者、被爆者ら心一つに /広島(2005/5/3毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 足掛け5年苦労が脳裏に /広島(2005/5/4毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 「日本は被爆国としての考えを」 /広島(2005/5/5毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 現地での声を聴く /広島(2005/5/7毎日)

世界を変えたい:NPT・核軍縮の現場で 許せぬ米の劣化ウラン弾 /広島(2005/5/8毎日)

 

 また、被爆地・広島を中心に約50万部を発行している中国新聞が開設した特設ページも随時関連情報が更新されている。このような被爆者、被爆地の声と行動に私たちはもっと目をむけ、耳を傾けるべきだと思う。

・NPT再検討会議(中国新聞特設ページ)

 地方紙の社説などもぜひ注目してもらいたい。

●関連社説

NPT会議・核兵器廃絶の履行を(2005/5/5琉球新報)

【NPT再検討会議】核廃絶へ着実な一歩を(2005/5/2沖縄タイムス)

【NPT会議】日本が米国説得を(2005/5/2高知新聞)

NPT会議/「核なき世界」を切り開け(2005/5/2神戸新聞)

非核地帯会議 軍縮の決意をNPTへ(2005/4/30中国新聞)

 4月下旬から原水協から830人など、日本から1000をこえる人々がNPT再検討会議にむけた要請行動などをニューヨークで繰り広げた。私も含めて、内向きだけでなく、外に向けた、多彩な行動をソフトにハードに期待したい。政府の責任を問うだけでなく、唯一の被爆国に生きる私たちは何ができるのか、その発信にふれた人々と考えあいたい。

【関連用語】

・NPT(2005/5/6毎日小学生新聞)

NPT最終文書(2005/4/6東奥日報)

【おすすめサイト】

ヒロシマ ピース サイト(広島平和記念資料館)

長崎原爆資料館

キッズ平和ステーション〔ヒロシマ〕

【ブログ内関連記事】

・国連で被爆者と外務大臣の姿をみて(2005/5/5)

・国連で初の原爆展の関連報道から思うこと(2005/5/13)

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