沖縄でまた悲劇 痛ましい基地被害はどこまで続くのか
都議選が終わり、選挙関連のキーワードで検索して私のブログにアクセスする件数がかなり増えている。今日は都議選の感想をと、私も思っていた。
日本の人口の1割が住む東京の議会選挙が大きく注目された。その一方で、人口1%にして米軍基地を75%を抱える沖縄で起きた、またも痛ましい、そしてやるせない事件。非日常的な事件が日常的に起きている。この現実がもっと大きく報じられ、私たちがもっと重く受けない限り、何も変わらない。
実際に変えてこなかったではないか。この事件にふれずにはいられない。
95年の夏、沖縄で小学生が米兵に集団暴行され、もう10年がたつ。痛ましい被害を受けた当時の少女はすでに成人している。その事件を受けて、沖縄で超党派によるよびかけで、8万5千人もの県民総決起集会が開かれ、「平和な島を返してください」と訴えた女子高校生の発言(全文はこちら)を、東京のマスコミも重ねて大きく取り上げた。
あれから10年。何も変わっていない。基地の固定化計画さえすすみつつある。沖縄での基地のたらい回しに過ぎないビジョンも本土では前進ととらえているようだ。
ちょっと待ってもらいたい。
米軍(軍属・家族を含む)の事件・事故数が、本土復帰後の1972年度から2004年度までの33年間で4万2416件。日米両政府が支払った賠償金も総額38億4960万円に達するという。(詳細こちら)
沖縄の二大紙の一つ「琉球新報」が7月2日、大きく報じた。沖縄選出の赤嶺政賢衆院議員(共産党)の請求に応じて防衛施設庁が提出した資料で明らかに。
そこに、米兵が小学5年の女児の胸をさわり、写真を撮る事件がおきたのだ。
<強制わいせつ>日本人女児の胸触った米兵を逮捕 沖縄署
(2005/7/4毎日新聞)
沖縄署は3日、10歳の日本人女児の胸を触ったとして、米空軍嘉手納基地所属の2等軍曹、アルマンド・バルデス容疑者(27)を強制わいせつの疑いで緊急逮捕した。
調べでは、同容疑者は3日午前8時20分ごろ、沖縄市中央1の路上にいた小学5年の女児に声をかけ、近くの駐車場に連れ込み、女児が13歳以下であることを知りながらシャツをたくし上げて胸を触った疑い。
同容疑者は「シャツを上げるようにジェスチャーをしたら女の子がシャツを上げたが、触ってはいない」と容疑を否認しているという。酒を飲んでいたとみられ、呼気1リットル中0・5ミリグラムのアルコールが検出された。
一緒にいた女児の友達で小学3年の女児(8)が自宅に戻り、母親に知らせた。被害女児も驚いて近くの施設に逃げ込み、施設の人が110番。駆けつけた署員が午前10時ごろ、駐車場から約150メートル離れた路上で、人相、着衣の似た白人男性が若い女性に声をかけているのを見つけ、任意同行した。
「許せぬ」地域衝撃、父母ら不安と怒り 米兵女児わいせつ
(2005/7/4琉球新報)
【中部】3日朝、本島中部で発生した米兵による小学生女児への強制わいせつ事件は、現場近くの住民や教育関係者らに強い衝撃と怒りをもたらした。事件発覚後、現場付近では県警が緊急配備を行い、数台のパトカーが行き来するなど騒然となったという。酒に酔った米兵による無抵抗の少女を狙った悪質な事件に、地元自治体の首長は「とんでもない話だ」と激しい憤りを見せ、4日にも米軍嘉手納基地司令官に直接抗議する考えを示した。
被害女児が通う小学校のPTA役員を務める女性は「朝早い時間帯に、どう子どもを守ればいいのか。少女が受けた傷は計り知れず、憤りを感じる」と語気を強めた。また、同じ小学校に通う娘がいるという母親=40代=は「この辺りは特に明け方が物騒。お酒を飲んで大声を出す外国人をよく見かける」と話し「普段から子どもに注意を促し、登校時は人目のあるところまで一緒に歩いている」と話した。
地元のPTA連合会長は「事件は許されない。少女に心理的外傷が残らないか心配。地域で交通指導している平日なら起こり得ず、そのすきを狙った行為だ。PTAが連携し、平日以外の対策を練る必要がある」と新たな対策の必要性を訴えた。
現場を管轄する行政区の自治会長は「イラク帰還兵もいるので注意していた。早急に情報収集し、評議委員会を開いて抗議の姿勢をはっきりさせなければならない」と強い調子で語った。
地元自治体の首長は事件について、開口一番「とんでもない話だ」と憤り、「地元が神経をとがらせて沖縄の負担軽減に取り組むさなかで、許し難い」と話した。
本土の新聞と地元紙の報道を比較しても、温度差は明らかだ。私は日米安保条約は不平等にもほどがあると思っているが、その体制を認めるとすれば、基地負担は公平でなければならないと思う。少なくとも東京には人口に見合う1割の米軍基地がなければならないだろうし、経済的・政治的な重要さからすればもっと。今の安保体制容認派は、沖縄の負担に依存しているに過ぎない。それを正そうとしないで、「平和」のために米軍基地が必要だというのでは、説得力を持たない。
学生時代に聞いた、ジャーナリスト今井一氏の訴えを思い出す。安保条約に賛成か反対かの国民投票をして、賛成の多い順に在日米軍基地を置いていくべき。その覚悟もないのに安保条約に賛成などすべきでないと。正論だと思う。
100人村の1人の家の中に75%の危険物を抱え込ませ、何か起きても見なかったふり。背負わされている側からみれば、この不平等感はたえがたい。しかも、その牙が少女など弱者に向かい続けているなかで。
若貴の確執、長島復帰など、話題を無理に大きく扱っているようにも思えるマスコミに、どれだけ正義の覚悟があるのか。子どもが子どもを傷つける、すさまじい事件が連日のように報道される中、問われているのは、おとな社会のモラルだ。
少女が日曜の朝に、酔っ払った米兵に服をたくし上げられ、さわられ、写真にまでとられる、この現実を徹底的に、継続的に背景まで含めて迫るつもりはあるのか。数日間だけセンセーショナルに報道するだけでピリオドを打つ。それでは何も解決しないことは、この私たちの「空白の10年」「厚顔の10年」が示している。
もう、いい加減にしてもらいたい。95年、小学6年の女子児童に信じられない暴行事件が起き、そのおぞましさと「平和な島を返してください」というまっすぐな訴えに、ブラウン管を通して全国的に衝撃が走ったのは間違いない。私も含めて多くの人が涙したはず。
傷を負った当時の少女に、私たちはどんな答えを出せただろう。戦後60回目の夏を前にして。そして、また未来ある少女に深い傷を背負わせた…。
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乗用車2台に放火の自衛官逮捕沖縄県警は2日、陸上自衛隊第一混成団・那覇駐屯地所属の3尉、原卓也容疑者(25)を強盗致死容疑で逮捕した。
同容疑者は2月26日午後7時45分ごろ、同市牧志3丁目の路上で、通りかかった同市首里山川町3丁目の学習塾経営、川満正則さん(当時48)から現金十数万円入りの財布を奪ったうえ、持っていた傘で川満さんの顔を突き刺すなどして、失血による窒息で死亡させた疑い。
「心当たりがない」と容疑を否認、
現場近くのパチンコ店で原容疑者が被害者の男性を伺う様子が店の防犯カメラに映... [続きを読む]
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最近の沖縄のニュースをテレビで見ていると必ずと言っていいほど反戦平和にかんする特集等が放送されている。戦争体験者は全て沖縄の一般国民である。その方々の悲惨な体験は大変心が痛む思いがします。しかし、あまりにも放送の内容が、悲惨な体験一辺倒ではないか。なぜ、沖縄戦争が起きたのか、なぜ本土決戦になったのか、なぜ連合国と戦うことになったのか。理解している若者は何人いるでしょうか。また、実際に戦争を体験した人の気持ちはどうだったのか。いろんな面から戦争というものを伝えるのがメディアの役目ではないでしょうか。今のままでは、「戦争=悪」としか持たない偏った考えの若者が増えていくのではないでしょうか。隣の中国が戦闘機、潜水艦で侵入しても何も思わない、平和ボケした若者しか現れないのではないでしょうか。真剣に「国」ということを考えましょう。きれい事をいえる時代はそう長く続かないのです。
投稿: シーサー | 2006.03.07 11:40