石原知事答弁「国連はそんなに大したもの?神様?」
9月27日に行われた都議会代表質問を、私は公明党の質問まで傍聴した。民主党や生活者ネットまでが文書で違和感を示した知事答弁がおこなわれたのは、その次の共産党の質疑の中だった。
今日、議事録速報版が都議会ホームページに掲載されたので、ここに報告しておきたい。
〔都議会代表質問2005/9/27〕 掲載部分のページはこちら
◆吉田信夫都議(日本共産党)
(中略)
最後に、石原知事の靖国参拝問題です。
靖国神社は、その刊行物、遊就館図録などでも明らかなように、二千万人以上のアジアの人々と三百十万人以上の日本国民の命を奪った過去の侵略戦争を、事もあろうに自存自衛のための戦争、アジア解放の正しい戦争だったと正当化し、太平洋戦争は米国の陰謀によるものだとしています。しかも、戦争犯罪人として断罪されたA級戦犯をぬれぎぬを着せられた人と呼び、神として祭るばかりか、間違った戦争観を国民に広げることをみずからの使命とし、そのための宣伝センターとなっています。だからこそ、新聞各紙が相次いで首相の参拝中止を求める社説を掲載し、アジア各国で批判が渦巻いたのです。
さらに、アメリカの新聞、ニューヨーク・タイムズは、特集記事で、靖国の歴史観は、ほとんどのアジア人、米国人にとって受け入れることができないと書くなど、欧米でも靖国神社の歴史観、戦争観への痛烈な批判が広がっています。
戦後六十周年を迎えた世界は、ドイツ、イタリアがヨーロッパで、日本がアジアで起こした戦争について、いかなる大義もない侵略戦争だったという共通の認識に立っています。過去の戦争への反省は、日本国憲法とともに、国連憲章にも明記をされた戦後の国際秩序の原点です。
ところが、石原知事は、この原点を否定し、日本の起こした戦争が間違ったとはいえないとか、日本がやった植民地支配はまだ人道的で人間的だったとか、日本は武力で韓国併合をしたのではないなど、靖国神社と同じ侵略戦争正当化の発言を公然と行い、靖国参拝を繰り返してきました。
ことし八月一日には、みんなで靖国神社に参拝する国民の会が産経新聞などに掲載した全面広告に、現職の政治家としてただ一人発起人として名を連ね、靖国神社を参拝し、小泉首相には毅然として参拝していただきたいとのメッセージを発信しています。この全面広告に対して、韓国の百人を超える国会議員が市民団体とともに抗議声明を発表したのは当然のことです。
知事、侵略戦争と植民地支配の正当化や靖国参拝をやめるよう改めて厳しく求めるものです。◆石原知事
(中略)
次いで、靖国参拝の問題でありますけれども、人間も、政党も、あるいは国もそれぞれの価値観を持っているものでありまして、私は、あなたが指摘したように、靖国の歴史観というものは、あなたが解釈されているものと全く違うと思います。ゆえに私は、例えば日清、日露の戦争にしても、我々の先輩、ごく近いご先祖が、この日本を植民地にしないために戦った、とうとい犠牲を払った戦争でありまして、それも含めて、あの太平洋戦争にしても、それに対する評価というものは国によって違います。
韓国や、あるいは中国は、それを現政権の政権維持のために、うまくプロパガンダで使っているでしょうけれども、しかし、同じ現代におけるマレーシアのマハティールさん、親友ですけれども、あるいは私がじかに会いましたエジプトの最初の大統領のナセルにしろ、インドネシアのスカルノにしろ、あの太平洋戦争というものの存在というものは、結局私たちの崛起を促して、我々はいわば第三次大戦といえる独立戦争を戦って勝ったんだと。日本の存在を、そういう意味で、陰影あるかもしれないが、大きな大きな影響を私たちへ与えてくれたという評価をしております。
ゆえにもまた、私は一人の日本人として、私たちの先祖の築いたこの近い過去に、批判もありますけれども、同時に誇りを持って、あなたは何といおうと靖国に毎年参拝いたします。あなたは行きたくなければ、行かなきゃよろしい。◆吉田信夫都議(日本共産党)※再質問
(中略)
靖国神社の問題は、まさに侵略戦争を全面的に正当化する歴史観を振りまく、そのことが問われており、だからこそ批判が強まっているんです。知事は、日本が行った日中戦争、太平洋戦争を、二度と繰り返してはならない侵略戦争であったという、国連憲章にも明記をされた戦後国際政治の原点を認めるのか認めないのか、お答えをお願いいたします。
◆石原知事
(中略)
それから、国連憲章の精神、何ですか、あなた、そんなもの。それは金科玉条なんですか。国連というのはそんなに大したものなんですか。神様みたいな存在ですか。冗談じゃないよ、あなた。共産党ってどんな価値があるかも知らないけど、今ごろ国連憲章なんていうものをまともに信じているばかはいませんよ、本当にそれは。
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〔都議会一般質問2005/9/28〕
◆村松みえ子(日本共産党) 共産党都議団関連資料ページより抜粋
質問に先立ち、石原知事に一言申し述べます。 昨日、知事は「国連憲章なんて、まともに信じているバカいませんよ」と国連憲章を否定し、侮辱する答弁をしました。国際連合は、第二次世界大戦の痛切な反省にたって設立されたもので、その目的の第一条に「国際平和及び安全を維持する」ことを高らかに掲げ、各国の内政には干渉しない、国際的な武力の行使は国連の決定によるなどの諸条件を定めています。この旗の下に世界の国々がつどい、世界平和のために力を合わせているのです。知事の発言は、おおくの戦争犠牲者をだした首都東京の代表として、許されるものではありません。きびしく抗議するとともに、都民に謝罪し、発言を撤回するよう強く求めるものです。
◆石原知事
国連憲章に何が謳われていようとですね、あの内部が腐敗しきった国連の実態、それから戦後60年たってもなお戦勝国条項なるものがまかり通っている歪なですね、仕組み、運営とその実態。あるいはチェチェン、コソボなどの危機的状況の中での国連の無能ぶりを直視されたら、そろそろ国連信仰をお捨てになったらいいんじゃないでしょうか。
日本共産党東京都議団はもちろん、都議会民主党、生活者ネットワークなども抗議や慎重姿勢を求める文書を提出した。これまでもババア発言、テロ容認発言等、知事から問題発言があったが、いつも何らかのアクションをおこなうのは共産党だけだった。
「国連憲章バカ」知事答弁という、率直な表現を使いながら、慎重に発言をという趣旨に抑え込んでいる民主党の動きが気になるが、これまでにない変化として今後の対応や、区市議会での意見書採択などへの波及も含めて期待したい。
それにしても、この知事、国連よりはるか上に存在しているようだ。憲法も国際的な枠組みさえも否定する都知事をその椅子に座らせておくことは国際的にも不幸だ。週2・3回の登庁でやってこれたわけで、椅子にはほとんど座っていないのだが。
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※追記
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