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2005.09.23

ほっとけない 世界有数のこの格差社会を

 「改革を止めるな。」 この大合唱と選挙制度のバネで大勝した小泉自民党は、構造改革をさらにすすめようとしています。

 小さな政府の自由競争社会か、適度に大きな政府の格差是正・機会平等社会か、民主党の所属議員の考え方がまとまっているとは思えず、2大政党の対立軸ははっきりしていません。むしろ、私には小さな政府の土壌での競い合いに見えています。

 先日、ある番組で選挙後の世論調査の結果を発表していましたが、めざすべきが自由競争社会か、平等社会かを問う設問で、自由競争社会が2割程度、平等社会は6割をこえていたように記憶しています。ANN(テレビ朝日系)の世論調査がネット検索でも出てこないので、しっかりしたものをここで示せませんが。

 となると、必ずしも、小泉改革を支持しているとは言いがたいのではないでしょうか。小泉さんの改革に対する姿勢、リーダーシップは買う、という人が多く、改革の中身の「官から民へ」の問題性についてはあまり考えていないと。

 「官から民へ」の流れは、官がやっていたことを低コストで丸投げで民間にうつすということだけでなく、市場競争の流れをうけて、公的な責任から民(個人)の責任へということとセットになってくるのは必然なんですが。

 で、どういう改革をするのかということが今度の選挙では語られませんでした。「ユーセイ!」「ユーセイ!」、「あきらめない!」「あきらめない!」の繰り返しでしたから。マスコミも大きく手伝って。

 どんな改革をする政党なのかが語られなかったことも大きな問題なのですが、いまのこの社会に対する現状認識はもっと聞こえてこなかったと思います。

 選挙前にやってくれればよかったのですが、スポーツ報知は9月20日付で「ひと握りの勝ち組と多くの負け組に2極化 一億総貧民時代」と見出しを打って「先進国3位格差社会」という現状を特集しています。

 ここで取り上げられた貧困率について詳しく見ていきましょう。

 国際機関のOECD(経済協力開発機構)が今年2月に公表した「OECD諸国における所得分配と貧困」というリポートを根拠に展開します。

 OECD加盟の30か国のうち、計測可能な27か国の「貧困率」を算出。ここでいう貧困率とは、世帯の可処分所得(収入から税金と社会保険料を控除して、年金などの社会保障給付を加算した所得」を個人に換算したもの。平均の半分以下なら「貧困者」と定義して、人口に占める割合を示したもの。

 平均的な所得の半分以下のビンボー度を示すもので、貧困率が高いほど、国民の所得格差が大きく広がっているということができるわけです。

日本の貧困率は何位?(OECD調査より)

           2000年前後  1990年代半ば 1980年代半ば

1位 メキシコ    20.3%    21.7%     20.7%

2位 アメリカ    17.0%    16.7%     17.9%

3位 トルコ     15.9%    16.2%     16.4%

4位 アイルランド 15.4%    11.0%     10.6%

5位 日本      15.3%    13.7%     11.9%

---

24位 スウェーデン 5.3%     3.7%      6.0%

26位 チェコ     4.3%     4.3%      不明

26位 デンマーク  4.3%     3.8%     5.3%

 80年代の半ばとの比較で、大きく数字を上げたのは、日本(11.9から15.3に)、イギリス(6.9から11.4に)、アイルランド(10.6から15.4に)で、いずれも経済の自由化政策をすすめ、それに対する補完施策を十分に行っていない国という指摘もあります。

 ちなみに、有力なところでは、イタリア12.9、イギリス11.4、ドイツ8.9、フランス7.0などですから、日本の突出ぶり、アメリカチックな格差社会は異常と言えます。

 これは、小泉さんが登場する前の2000年の調査ですから、それから雇用の非正規化、フリーターの増加などのもとで、今現在はもっと「貧困」を生んでいることは推察できます。

 中の上ではなくても、中の下と思いたい。下の上とは思いたくない。だから格差社会の問題にふれたくないという国民感情はよくわかりますが、現実は国際的に見ても厳しい格差社会にある。その格差を拡大させるのか、縮小・是正させるのか、総選挙を終え、圧倒的な権力を持たせた中で、私たちに問われているのではないかと思います。

 すでにこれだけの「貧困率」なのに、「改革を止めるな。」と言われても。小泉改革は、格差の拡大をつきすすむ「改革」なんですから。

 私は、この格差社会も、小泉「改革」も、ほっとけない、です。

***

〔追記2005/10/8〕

このブログ記事は、団藤保晴氏(新聞記者/ネットジャーナリスト)の「ドイツ総選挙と比べながら考えた〔ブログ時評34〕」に取り上げられました。また、〔ブログ時評34〕は、月刊誌『世界』2005年11月号(岩波書店)の連載「ネット言論はいま ブログ時評on SEKAI (8) 団藤保晴」に掲載されました。

〔追記2006/1/3〕

格差社会の広がりについて、下記にその実態を示しました。

すすむ「格差先進国」の実態 「新しい時代」への「挑戦」とは?(2006/1/3)

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コメント

お邪魔します。「ひと握りの勝ち組」うんぬんとありますが、
要するに今の政官財+民界は「内輪」で遊びたいだけなの
ではないのでしょうか? TVニュースや新聞(全国紙)には
そうした事が顕著に表れているようですし、その論調には
ナショナリズムやファシズムっぽい気配がもろに感じられますね。
(随分と押しつけがましい文体のようですが…)
これから国際世論もろとも下らん方向に行く可能性がある
かも知れませんよ。何せこれからは物事全て「オカネ」で
圧力をかけてくるのは明らかですしね。

こんにちは。いつも読んでいます。

以前、ユニセフ等の資料で私も日本の貧困率についての記事を書きました。
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2005/03/post_3.html
こういう数字を見ると、どうして新自由主義的な経済政策が支持を受けるのか私には謎なのですが、それ以上の、人を惹きつける何かを自民党は持っているのでしょうか。

今の政権が人を惹きつけるのは単に「毅然とした」
あるいは「強い」といったイメージ「だけ」のように感じ
ます。これはあのアメリカでは盛んに使われている
言葉ですし、ある意味アメリカの模倣、亜流といった
印象を受けます。貧困という観点であれば、例えば
ハリウッドとニューオリンズとの格差みたいな…。
案外他の国と比較してみれば物事が良く見通せる
のではないでしょうか?>うにさん

ハリケーンに逃げ惑い、苦しんでいる人々の中に、自分や、自分と近しい人の面影を見出して愕然となります。あれが、明日の日本の真実の姿。

来月からいよいよ介護保険の改悪スタート。
自立支援法のたたかいも、正念場。

はとTきて気合いれっぞ!!

貧困というのは生活保護世帯を言うのです。

「ここでいう貧困率とは、世帯の可処分所得(収入から税金と社会保険料を控除して、年金などの社会保障給付を加算した所得」を個人に換算したもの。平均の半分以下なら「貧困者」と定義して、人口に占める割合を示したもの。」という定義であれば、この貧困率が必ずしも貧困者を定義できているとは限らないのではないでしょうか。

この定義では、たとえ貧困者の所得に変化がなくても、大金持ちが増えて所得のばらつきが拡大し、中央値と平均値が乖離すればするほど、「平均の半分以下」に含まれる人が増えてしまいます。つまり、貧困人口に変化がな成功した人が大金持ちになれる国(アメリカのような国)=貧困率の高い国という結果になります。

したがって、本来の意味での貧困率を算出したければ、平均値ではなく、中央値で分析すべきではないでしょうか。

今回の選挙は,TVにイメージがつくられて,それに投票行動が左右されました.TVの人たちはそれこそ平均的な収入の倍以上もらってますから,危機感ないでしょう.

失業率だけで10%を超える国が幾つか有る筈なのですが、
ここで言う貧困層に失業者は含まれないのですか?

私は求人を創出できる政策を支持します。

「貧困率」には私も最初から疑問を持っていました。「率」って計算して答えを出したその時点で「平均化」されてしまう、負の側面をも合わせ持っている。例えれば「森を見て木を見ず」そのものになります。昔「重み」をつけた計算を習った記憶がありますが、そうした算出方法を用いるのが一番妥当なのでは? と考えます。それにその定義自体既に曖昧模糊としたものなので、一概に鵜呑みは出来ない筈です。

雇用の問題もそうですが、いろんな意味で「地盤」が確立されない限り、危機感は解消されない─そう思います。

OECDは中央値で算出してますよ。
現実を認めるべきです。
グローバルリゼーション、新自由主義、マネタリズム........
「鬼畜」中曽根以降のいわゆるネオリベラルどもが
貧富の格差を生み出したのです。

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