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2005.09.12

劇場選挙、声が正確に届かない制度って?

 いやー、びっくりしました。小泉劇場の「郵政大合唱」で自民党大圧勝。

 そのなかで民主党は大幅に減り、東京の小選挙区では菅さんが大接戦の末に勝ったのみで、全敗。

 憲法を守り生かす立場で、増税に反対、格差社会の是正を掲げた共産党や社民党はその逆風のなかでも、なんとか踏みとどまりました。

 で、自民党圧勝、民主惨敗。

 これ、正確な結果といえるでしょうか。

 国民の声の大きさを反映してるとは思えません。え?偏ってます?私?

 では、票で見ていきますよ。

 小選挙区は定数300。自民党は219議席を占めました。そう7割以上です。

 民主党はその4分の1以下の52議席です。

 得票率はどうでしょう。自民党が47%、民主党が36%。

 たった10%の差がここまで拡大する。大きい声はさらに大きく、小さい声はけなげに、はかないまでに小さくなる。これが小選挙区制なんです。

 1位が35%、2位が30%、3位が25%、4位が10%と接戦でも、1位の35%の票だけが生きるという制度ですからね。

 ナンバーワンにならなきゃだめで、ナンバーツーなら基本的に議員にはなれず、素敵なオンリーワンでも、もともとのフツーの生活に戻されてしまうのが小選挙区制です。1番とらなきゃ帰ってくるなという、スパルタ競争主義です。

 東京の小選挙区は、民主党の得票が36%に対し、自民党約50%。結果は菅さんだけの民主党1勝に対し、自民党は23勝ですよ。

 共産党の小選挙区の票7.3%はすべて死んでしまいました。

 小選挙区は、選挙区によって自民、民主、共産のなかから選べという選択肢のせまいところが多かった(ところによっては自民、民主の2択)わけですが、比例代表はどうだったでしょう。

 前回の自民党は35%だったのが、今回どれだけ伸びたでしょう。38%、つまり3%増えただけ。惨敗した民主党も、前回37%だったのが31%に6%ダウンしただけ。

 共産党と社民党の票はあわせて13%ですが、それぞれ一ケタの議席にとどまったので、党首討論にも参加できない状況は続くようです。

 7~8人に1人は共産党か社民党に入れたという事実のもとで、その声が党首討論に反映されないというシステム。小さいところは小さく、大きいところほど有利になるしかけが何重にもあるわけです。

 政策本位、政権選択になるということをうたい文句に、「政治改革」の仮面をまとい、反対するものは「抵抗勢力」というレッテルをはって、通された小選挙区制。郵政しか争点にしなかった政党が、劇場選挙で少し得票率を増やしただけでこんな結果に。

 本当に政策本位というのなら、作家の高村薫さんもスポーツ紙で主張したように、完全比例代表制をやるべきです。名簿順位を事前に示せば、落下傘候補もなければ、造反もない、政策も顔ぶれから党の優先順位もわかりやすいわけです。

 自民党は比例でみると3%得票を伸ばしただけ。この結果で、選挙制度と同じように、またこれまでも広がってきた格差拡大社会がさらにすすめられることになっていくことを多くの国民は本当に求めているのでしょうか。

 愛読している日刊スポーツはまだマシな方だと思いますが、今日の一面に「小泉劇勝!」の大見出しの隣に、紙面にはそれより小さい見出しで「増税 改憲…独裁の道」と打ちました。選挙戦最中はあれだけ劇場的に掲載しておいて、今日の一面の結びで、

 「冷静に考えれば、行き詰まるアジア外交、北朝鮮問題、消費税、サラリーマン増税、さらにその先さらにその先に憲法改正問題もある。解決策を示さないまま、それでも、国民は支持をしたことになる。憲法改正には衆参両院の3分の2の賛成と国民の承認を得る必要がある。強大な権力基盤を固めた首相は、これからの日本のありようをどう考え、どこに導いていくつもりなのだろう。」(日刊スポーツ2005/9/12)

 って、もっと早くから言ってほしかったぞ。

 この指摘、ひとごとのようで客観的。しっかりしよう、有権者! 小泉劇場と言われた今回の選挙。結果の出方に選挙制度が大きく影響していることをみなければ、私たち自身もまわりの声が聞こえないようになっていきそうで、こわいです。

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コメント

おすぎとピースのおすぎです。初めまして。
「そうか、こういうふうに分析しなくちゃいけないんだ・・・!」と、ちっと短絡的な自分を反省しています。
「この国の民主主義は死んだ」(日刊ゲンダイ)などという言葉に飛びついているようでは、知らず知らずのうちに小泉劇場型選挙に毒されていた一人なのかも知れません。

ps)tamyさん、こちらのつたないブログを「お気に入り」に入れていただき、ありがとうございます。とてもうれしいです。(いっぱい感謝!)

おすぎさん、コメントありがとうございます。先月アクセス解析やったときに、「おすぎとピース」からのアクセスと、また「気になるサイト」にいれていただいていることに気づきまして。感動しましたし、ときどき見にいってました。

12日夕方、仕事で移動しているときに日刊ゲンダイの記事、とびつきましたよ。私も。で、実際の票はどう動いたのかってこと、気になって、調べてみまして。

綱引きやシーソーみたいに、少しかわるだけで、勝負が大きく決まっちゃう。こんなんで4年も任せていいのかよー、とみなさんに言いたいですね。

小選挙区制が出てきた細川内閣当時、「くっせ~くっせ~うっさんくっせ~小選挙区制~」と歌っていた私・・・。もう少し上品な歌を作って運動すりゃよかった・・・(涙)あの法案が出たとき、「2大政党いいんじゃない?」の嵐が吹いて、成立したんでした。およよよよよ・・。


おりがみさん、いつもコメントうれしいです。2大政党にもならない1人勝ちですからね。それだけ票がいってりゃ別ですけど。あの日あのとき、もうちょっと上品な歌なら・・・。今頃NHKの「その時歴史は動いた」とかで「小選挙区制をとめた保育士」とかで取り上げられてたはずですね。あー、悔やまれますです。(ToT)/~~~

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