「マルちゃん」と食文化 食育の責務を持つ私たち
私のブログ記事を紹介した「ブログ時評34」が掲載された月刊誌『世界』11月号(岩波書店)。
その中の、『イギリスで巻き起こる「給食革命」-はたして「民営化の失敗」から立ち直ることはできるのか?-』(阿部菜穂子)を興味深く読んだ。「失敗」の仕方が極端ではあるが、公共的な事業をすべて民営化していくことへの警鐘として、とらえるべきだろう。
同記事について、「ブログ時評」が「学校給食事情~飽食国の貧困から始めて[ブログ時評36]」で取り上げている。読んで参考になるリンクがいくつもはられている。
『世界』の記事とあわせて、学校関係者、保育園などの関係者に、ぜひ読んでもらいたい。
今日、産経新聞のwebに、一見ほほえましくも、食文化について考えさせられる記事をみつけた。
日本の即席ラーメン「マルちゃん」 メキシコで国家的人気
「簡単にできる」意味の言葉にも【産経新聞2005/10/22】【ロサンゼルス=岡田敏一】日本の即席ラーメン「マルちゃん」がメキシコで国家的規模の人気食品になり、メキシコの伝統料理が危機にひんしている-。こんな記事を二十一日付の米ロサンゼルス・タイムズ紙が一面で紹介した。メキシコでは「マルちゃん」という単語が「簡単にできる」「すぐできる」という意味で使われるという。
記事は「メキシコで昨年約十億食の即席ラーメンが売れた。一九九九年の約三倍で、うち『マルちゃん』は85%の市場占有率を誇る」と説明。人気の秘密を「メキシコの全労働者の約六割は平均日給が十三ドル(約千四百円)以下。しかし『マルちゃん』は約四十セント(約五十円)と手ごろで、簡単に作れ、冷凍の必要もない」と分析している。
一方、「『マルちゃん』は豆や米を使うメキシコの伝統料理に取って代わる勢いだ。われわれはメキシコの食文化を守らねばならない」(メキシコ文化芸術審議会のメンバー)という危機感に満ちた発言や肥満、糖尿病などを懸念する栄養士らの声も紹介している。
「マルちゃん」ブランドを展開する東洋水産(本社・東京)は米現地法人「マルチャン・インク」を一九七二年、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外に設立、北米、メキシコに出荷している。
同社は「先日もメキシコの新聞が、審議を早々と打ち切った議会を『議会がマルちゃんした』と記事にした。いまや動詞として使われるようだ」と話している。
日本のファストフードがメキシコで人気となり、結果として伝統的で家庭的な食文化が傾いている。
日本では、食育基本法が今年6月に成立したばかり。13条で、国民の責務が定められている。
【食育基本法】
(国民の責務)
第十三条 国民は、家庭、学校、保育所、地域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。
政府の他の施策とはかみあっていない気もするこの法律。法律で定めなければならない状況を迎えた今、責務を持つ私たちはどのように「努める」のか。
一度崩れた食文化の再建が「マルちゃん」(簡単にできる)ではいかないことを、『世界』の記事に読むことができる。
コンビニ・総菜屋が台所感覚の私に、誰も言われたくないとは思うが。責務を果たそうとして。
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ショクイク基本法・・・ああ、きもちわるい法律ができたなあって思ってました。
こんなことする前に、自給率アップ考えてよ。狂牛病とか農薬まみれ野菜とか、自然壊してエビ養殖とか・・・・この国もうだめだわ・・。
投稿: おりがみ | 2005.10.30 19:41