職員の半数が去る保育園
○○保育園、サイコーだったよ。センセイ、ありがとう。この保育園でもっと磨いてもっとサイコーになってね。
年度末のある保育園に行くと、保護者と子どもと職員の別れの声が響いていました。保育士の目には涙が。。。
卒園シーズンも終わり、新たな始まりのとき。初めての仕事に向き合う新卒の保育士や学校の先生は、緊張の日々が続きますね。
そんな前向きのものではない緊張を、年度末に迎えた保育園があると知って、驚いています。以下にふれます。
◆追跡・静岡:浜松の保育園、労基法違反告発 保育士の再雇用求め保護者ら署名 /静岡(2006/3/31毎日新聞・静岡)
◇保育士2人の再雇用求め、保護者らが署名2000人分「安心して子供預けられない」
◇新たに6人抗議退職
浜松市内に昨年6月に開園した私立の認可保育園を、保育士らに労働条件の書類を渡さなかったとして、県自治体労働組合総連合が労働基準法違反の疑いで浜松労働基準監督署に告発した事件が波紋を広げている。園が主任(47)ら2人の保育士を再雇用しないとしたことに抗議し、31日付で新たに6人の保育士が退職。保護者らは保育士再雇用を求め2000人以上の署名を集めたが、一様に不安を訴えている。
「園は何も説明してくれない。こんな状態で安心して預けられない」。24日夜、約25人の父母らが浜松市内の公民館に集まった。目には園への不信感と疲労がにじむ。保育士の雇用継続を求める署名は、4~5日の2日間で2000人を超えたが、決定は変わらなかった。園は「検討はしたが、打ち切る理由の方が重かった」と言い切る。説明を求めた保護者にも、園は「経営者側の問題」と議論を打ち切ったという。31日以降、保育士17人中8人が出勤できなくなる。
◇「再雇用しません」
告発容疑は、園が昨年4~8月に保育士ら17人を雇った際、1年契約とする労働条件を示す書類を渡さなかった疑い。
告発状では、主任ら2人に「期限のない契約」と説明して契約期間が白紙の契約書に署名させ、その後1年と記入して渡したと指摘している。主任らは「職員には他で働いていたベテランも多い。1年契約と知らされていたら、わざわざやめてまで来ない」と憤る。3日に園から通知された書類には「再雇用については行いません」とあるだけで、理由はない。主任は今夏までに、打ち切りの無効確認を求め提訴する方針だ。
◇食い違う主張
主任らは保育士のリーダー格として、足りない玩具の購入やプールの整備などを園に求めてきた。しかし玩具は増えず、多くは保育士らの持ち込みだったという。6保育士が退職することを明らかにした後の終了式では、保育士らが私物の玩具を引き揚げたため、保育室にはがらんとした光景が広がった。母親らの間で「主任は母親としても大先輩。いつも心配してくれて、手紙にもびっしり育児のアドバイスをくれたのに」と不安が増幅している。
園は容疑について「書類を渡すのが少し遅れたのは事実」と説明したが、契約期間は最初から記入していたと主張している。玩具不足の指摘も「ありえない話」と一蹴(いっしゅう)し、「むしろパズルやプールについて、職員から『いらない』と言われて見送ったものもある」と、保育士・保護者の主張と正面から対立している。
浜松市内全体で54の民間認可保育園があるが、認可が取り消されることはまれ。市保育課は「1年契約は珍しいが、同園は定期監査でも問題はなかった」としている。
開園したての保育園に入職し、初めて迎えた年度末。まもなく新年度という時期に、雇用が1年契約だったと告げられる。玩具などの提供もしてきたという保育士側。開園1年足らずで職場をさらなければいけないという事態に。しかもごく一部の職員ではなく、リーダー格の主任を含む、ほぼ職員の半数の8名もが。私立の認可保育園で主任が1年契約というのはあまりないケースでしょう。
子どもは最大で6年近く通う権利があるなかで、全国的にも保育園での雇用に1年契約が増えていますが、子どもの権利や子育て支援という点で許されないと思います。保育の現場で特に責任が大きく、継続的な視野と経験が求められる主任もなんて、ありえないはず。
保育士側の主張が事実なら、ワンマン運営の極みで許されません。経営側とともに行政の責任も問うべきだと思います。開園を認めて責任をもって認可し、運営のチェックもしているわけですから。
もし、労働組合があれば、こんな事態にはならなかったとも思います。
職場に問題を抱えたままがんばってきた職員はすばらしいし、職員の犠牲の上にワンマン運営をしてきた園の対応は非難されるべきです。
でもやはり、以前から労働組合があれば、雇用の内容の確認と改善、設備や遊具の見直しも含めて、職員と子どもたちの権利が確立されていただろうとも思ってしまいます。
私立保育園には多くの園に労働組合はなく、園長や理事会任せになっていることが一般的です。結果として悪い事態を生んでいないところもありますが、私立保育園に就職した職員、子どもを預けている保護者は、園の運営体制をみつめてみる必要があるのではないでしょうか。
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