石原慎太郎という「裸の王様」に対して
8月30日、日本オリンピック委員会(JOC)は選考委員会をひらき、2016年夏季五輪の国内立候補都市を東京都と決定した。55人の委員による投票で東京都が33票、福岡市が22票。東京は1964年大会以来、2度目の五輪開催をめざし、海外の立候補都市との争いに挑む。
これを現実性のあるものとしてとらえているスポーツ関係者や都庁職員はどれだけいるのだろうか。
2008年は中国・北京での開催。2012年のイギリス・ロンドンまでは決定済みで、ふたたびアジアの大都市でということがありえるだろうか。
そもそも、石原慎太郎という人は、中国蔑視の象徴的な存在として知られていて、本人も北京五輪への敵意をむき出しにしてきた。
◆「北京五輪ボイコットを」 石原都知事、英紙インタビューで主張(2005/6/2読売新聞)
東京都の石原慎太郎知事は1日付の英紙タイムズのインタビューで、「日本は2008年の北京五輪をボイコットすべきだ」と主張した。知事はその理由として、中国で昨夏開かれたサッカー・アジアカップでの反日騒ぎを取り上げるとともに、「中国にとって北京五輪は、ヒトラー時代の1936年ベルリン五輪と同じ意義を持つ。ヒトラーは軍事力を背景に示威行動をしたもので、北京も同じ構えを目指している」と述べた。
1000万前後の大都市での開催が3回続くというのも考えにくい。そもそも、石原知事は国連の基本方針にも否定的な姿勢を都議会で明確にしてきた。
◆「そろそろ国連信仰はお捨てになったら」 (2005/9/29毎日新聞)
石原慎太郎知事が27日の都議会本会議で「国連憲章なんてまともに信じてるバカは いませんよ」と答弁した問題で、共産党は28日の一般質問で「国連は第二次世界大戦の痛切な反省にたって設立されたもの。知事の発言は、多くの戦争犠牲者を出した首都東京の代表として許されるものではない」と抗議し、発言の撤回を求めた。
これに対し、石原知事は「国連憲章に何がうたわれていようとですよ。内部が腐敗しきっ た国連の実態。戦後60年たってなお戦勝国(旧敵国)条項なるものがまかり通っているいびつな仕組み、運営とその実態。そろそろ国連信仰はお捨てになったらいいんじゃないでしょうか」と再反論した。
また、都議会民主党は28日、石原知事の「国連憲章バカ」発言について、「議会の品位と秩序を保つ上でも、知事の慎重な発言を求める」として、議長に対し、都議会の意思として知事に申し入れるよう要請した。生活者ネットも知事の一連の発言に抗議する声明を出した。
石原知事のもとで働く都庁職員はこのような事実を知った上で、本気でオリンピック招致が可能だと思っているのだろうか。
招致に躍起になっている都議会議員も、石原知事が3選出馬をあらためて今日表明したなかで、半年後の知事選で「勝ち組」でいたいだけなのではないだろうか。招致を理由にした大型の開発事業を推進したい下心が見えてくる。
情けないのは2期・7年半、石原都政を批判してきながら、その対立候補が名乗りをいまだにあげていないということ。
石原都政でない対抗軸としての「革新都政をつくる会」、「平和と人権の知事を!」(東京。をプロデュース2007)、「東京都を女たちが変えるキャンペーン」などの動きが見えていないということ。
各種手当などの経済給付事業の切り捨て、福祉・保育の基準切り下げと市場化、度重なる議会内外での憲法否定発言、専横と批判された浜渦前副知事の懲りない参与任用、学校現場での日の丸・君が代の強制、都立学校での挙手禁止、テロ容認発言、アジアや女性への蔑視発言などなど、2期8年の負の部分は大きい。
批判してきた大人が選挙という民主主義の実際の責任を果たせない限り、大きな流れに飲み込まれる、もしくは乗っかってしまう風潮は確実に急速に、独裁的に加速するはず。
それでいいのか。
あの王様は裸だと遠くで言うのではなく、迫っていく責任と迫力が岐路に立つ私たちと未来の行方を大きく左右すると思う。
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次期都知事には、ぜひ社会的弱者に配慮のできる品位ある人をと切実に思います。
それにしても、選挙に向けて静かすぎるように思うのですが。
投稿: さくら子 | 2006.08.31 10:03