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2006.12.31

光をあてる、もうひとつの紅白

 2006年をしめくくる紅白歌合戦、事前の盛り上がりは薄いようだ。

 サプライズのない出演メンバーだけでなく、世代をこえて歌がヒットする社会状況でないことも一因かと思う。

 今年の紅白のテーマは「愛・家族 世代をこえる歌がある」だそうだ。

 帰省して、ふだん会えない家族と観る人。家族と離れ、一人や二人で観る人も。

 家族構成には恵まれても、家族愛が満たされず、寂しさをかかえて繁華街で年をこす少年・少女もいるだろう。

 また、養育環境が理由で帰ることのできない子どもたちもいる。

 子どもたちが主役になった「もうひとつの紅白」が大晦日に催されるという。

手づくり紅白で温かく越年 武蔵野の養護施設(2006/12/30東京新聞・東京版)

 大みそか、家庭の事情で親元に帰れない子どもたちのために、手づくりの紅白歌合戦を開いている児童養護施設が武蔵野市にある。「施設に残る子どもたちに寂しい思いをさせたくない」と始まった“もうひとつの紅白”は、今年で二十八回目を迎える。今では、子どもたちにとって大みそかは、待ち遠しい一日になっている。 (中沢誠)

 この施設は、家庭の事情で親と一緒に暮らせない二歳から高校三年生までの五十人が生活する社会福祉法人「のぞみの家」。

 施設でも、年末年始を両親や親類と過ごすことのできる子どもたちは家に帰る。大みそかが近づくにつれ、一人また一人と、一時帰宅する子どもの姿が目立ってくる。

 一方で、家庭の事情から施設に残る子どもたちも。そんな子どもにとっては、楽しいはずの年末年始が、一番寂しい季節だった。

 この手づくり紅白歌合戦は、「年越しそばを振る舞いたい」という、近所のうどん店の店主からの申し出がきっかけ。「大みそかだし、せっかくなら自分たちで紅白歌合戦をやって楽しもう」と山崎泰子園長(77)との間で話が持ち上がった。うどん店を会場に一九七八年から始まり、昨年からは施設で開いている。

 以来、大みそかは特別な日になった。紅白歌合戦が近づくと、こっそりと出し物の練習も始まり、施設はワクワクした雰囲気に包まれる。

 本物の紅白歌合戦もテレビで見られるようにと、開演は午後三時。紅白に分かれた子どもたちが交互に登場する。歌だけでなく、楽器演奏や手品などバラエティー豊か。山崎園長も審査員を務める。「かなり情が絡みますが」。子どもたちは、お菓子を食べながら、約二時間のステージに大満足だという。

 高校三年の女子生徒(18)は「家に帰れる子を多少うらやましいと思うこともあるけど、私には(手づくりの)紅白がある」と話す。

 最近になって、虐待などで家に帰すことのできない子が増え、今年は半分近くの子が施設で大みそかを過ごすという。

 「実家に帰れない子にも光を当ててあげたいのです」と山崎園長。今年も会場いっぱいに、子どもたちの大好きなお菓子を用意するつもりだ。

 イマドキのかっこよい行事ではないのかもしれない。コミュニケーションをとらず、干渉しあわない家庭で育つ子どもたちからみると、「なんで?」と失笑さえされるのかもしれない。

 うどん屋の申し出と園長の語る光、このあたたかさがいま社会全体に欠けているのではないか。

 虐待事件が相次いで報じられた2006年。どの子どもにも、平等に安心できる場所とチャレンジできる環境が保障されているだろうか。

 もうすぐ始まる紅白歌合戦。その前の午後3時から始まる「もうひとつの紅白」。

 家庭や施設、学校など、居場所で、みんなが見つめるなかで、一人ひとりが、みんなが主役になれる機会はありますか。豪華な衣装やセットではない、手作りの。

 

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