幻の都知事候補 「都民との十の約束」
東京都知事選の告示まで1ヶ月を切り、揺らぎをみせる石原都知事に対して民主党が有力候補を擁立できるかに報道が集中している。
◆都知事選:擁立作業、週明けに持ち越し 民主党(2007/2/24毎日新聞)
民主党は23日、東京都知事選(4月8日投票)の候補者擁立を週明けに持ち越した。菅直人代表代行に近い五十嵐敬喜法政大教授らが浅野史郎前宮城県知事に改めて出馬を呼びかける集会を25日夜に都内で開くことになり、それまでは党内の人選作業を中断する。同党は浅野氏が16日に正式に出馬を固辞したのを受け、党幹部が海江田万里前衆院議員や小宮山洋子衆院議員らに繰り返し出馬を要請したが拒否された。待望論の強まっている菅氏も出馬を拒み続け、擁立作業は混迷。浅野氏は23日、毎日新聞の取材に「今のところ(出馬しない)気持ちは変わらない」と語ったが、菅氏は浅野氏の翻意に望みを託す構えをみせている。【山田夢留】
先週から前宮城県知事の浅野史郎さんが出馬を否定したとする報道が続き、菅直人氏の出馬を求める声が高まりつつあるようだが、この記事にもあるように「今のところ(出馬しない)気持ちは変わらない」の「今のところ」という表現に含みはまだあるようだ。
民主党からの要請は断ったということ、以上でも以下でもない。
2月25日には「浅野さんのハートに火をつけよう」と市民集会が準備されている。
私は、浅野さんの実績について細かくは知らないが、福祉は施設から地域へとすすめていったことが大きく評価されているようだ。しかし、重度の障害者や高齢者などは地域で生き生きと暮らせているのだろうかという疑問は持っている。オリンピックをどうするのかも含めて。
いずれにしても、動向が注目される。
さて、民主党は今度の都知事選にむけて50人の候補者リストをつくったとされている。キャスターの筑紫哲也さんやジャーナリスト鳥越俊太郎さんらは要請をうけて断ったことが明らかになっている。また、先日三選出馬を表明した山田宏・杉並区長も要請があったことを語っている。
リベラルといわれる筑紫さんや鳥越さんと、石原氏とも思想的に近い山田区長では随分と考え方が違うのだが。
政策なきリストアップ・出馬要請だったことがみてとれる。
2月22日の毎日新聞夕刊に興味深い特集記事が掲載された。
以下をぜひ読んでいただきたい。
◆特集ワイド:どうなってるの?東京都知事選 ジャーナリスト・鳥越俊太郎さんに聞く(2007/2/22毎日新聞夕刊)
◇元日、手帳に「都民との十の約束」
東京都知事選の告示まで1カ月。なのに、3選をめざす石原慎太郎氏(74)の対抗馬が出そろわない。候補者として名前の挙がったジャーナリスト、鳥越俊太郎氏(66)が首都決戦について語った。一時は出馬を決意してまとめた「都民との十の約束」を明かした。【坂巻士朗、大槻英二】
◇一時、「やろう」と思った。がん転移で断念
テレビ朝日系の情報番組「スーパーモーニング」を終えた足で、鳥越さんは都内のホテルに現れた。毎日新聞記者からテレビの報道キャスターに。ニュースの職人は席に着くなり、「都知事選の争点だったよね」と切り出した。
「石原さんが前回と同じだけの票を取れるかどうかでしょう」。石原氏は03年4月の都知事選で308万票を獲得し、圧倒的な強さで再選した。「事実上の信任投票になるかもしれない。投票率がどこまで上がるかを含めて、有権者がどの程度、今の石原さんを評価しているのかというね」
自身は、石原知事をどのように見ているのだろう?
「知事としての8年間は成功したと言えるのか。外形標準課税の導入は裁判になったし、都が出資してつくった銀行もうまくいっていない。東京オリンピックを開催できるあてはない。むしろ最近は、税金を無駄遣いしているとは知らなかったという人が増えている」昨年末の都議会で石原氏が指摘されたのは、高額な海外出張や、四男で画家の延啓(のぶひろ)氏(40)が関与した事業への公費負担問題だった。「ワンマン体制で、トップダウンの権力集中型の都政をやると、だれもストップをかけられなくなる。それが都民に次第に分かってきた」
石原氏の政治姿勢への評価は厳しい。では、出馬は考えなかったのか。民主党から打診があったと伝えられたが。
「去年の暮れに、菅(直人党代表代行)さんと、円(より子都連会長)さんに会い、立候補を打診されました。その席では、イエスもノーも言わずに考えたんです。そして、一時期ね、やろうと思った」
そう言って鳥越さんは、手帳を開いた。1月1日。そこには赤字で「東京都民との十の約束」と書かれていた。
「マニフェストです。東京が世界でナンバーワンというのを10個ぐらい掲げてやろうと思いました」と、少し読み上げた。「環境でナンバーワン、非核でナンバーワン、治安・安全で世界一。そして少子化対策、教育・芸術・文化、女性を生かす、アジアとの連携、中小企業の力……」。続いて、具体策を語る。
「米国は京都議定書から離脱したけど、ニューヨークやシカゴを巻き込めば、東京が環境問題のリーダーシップをとれる。非核問題も、核保有国が『核を持つな』という状態の中で、唯一の被爆国の首都・東京が音頭を取ってやる。若者が、日本のものづくりを支えてきた町工場の職人を目指すような制度も……」
“鳥越候補”は誕生寸前だったのだ。「正月にね、そういうメッセージを考えました。そうすれば、『品格ある都市』になると。もしおれが知事になったら、それができると思いました」。しかし、決断をあきらめざるを得ない事態が起きる。「1月4日に、主治医から『がんが転移している』と言われて」。鳥越さんは05年10月、直腸がんの手術を受けた。「妻は出馬すれば離婚するというし、娘たちも絶対に反対。僕も、勝てたとしても4年間はちょっと無理だと」。民主党に断りを入れた。 (後略)
オリンピック招致に否定的(都議会民主党は招致自体には賛成なのだが)で、税金のムダづかいをただす。そして環境や非核政策にも積極的。私の勝手な憶測だが、この「都民との十の約束」が掲げられていたら、民主党もオリンピック政策の見直しなどをした上で民主党、社民党、生活者ネット、無党派議員(区議・市議)、共産党が前面にはたたないなかでも応援にまわり、市民が支えていくという統一候補になりえたはず。
今年に入って、本当に体調がすぐれないようで、編集長をつとめてきたオーマイニュースへのかかわりや関連取材への対応など批判もされているが、がんの転移が残念だ。幻の「統一候補」。
転移がわかる以前もがんの手術をうけて復帰後、朝のテレビ出演の際、カメラには映らないように、番組中にたびたびトイレにかけこんでいるという話を何かで読んだこともある。
現時点では、石原都知事に対し、元足立区長の吉田万三さんと建築家の黒川紀章さんが手をあげている。
黒川さんについては、今日の東京新聞が特報記事を掲載している。
◆都知事選に出馬表明 黒川紀章氏の真意は(2007/2/24東京新聞特報)
また別の報道では、22日の黒川会見で「貧乏人でも住める東京を」と語ったという。
建築家活動を当選後も続けるということも問題だが、「貧乏人」という表現を、自治体の首長になろうとする人が使うことも信じられない。
私は現時点では吉田万三さんを応援している。党派性が強いなどの批判もあるようだが、吉田さんは「(1)憲法9条を守る、(2)税金の使い方を大型開発中心から暮らし中心にする、くらいで一致できれば、もっともっと力を合わせることができるはずだ」(2006/12/12ひとこえ万三より)と常々語っている。
つまり、私の勝手な解釈では、この2点で一致できて、吉田さんよりも幅広い支援が得られ当選に近いと思われる人が現れれば、相談・協議して共闘の余地があるということだ。この可能性は最後までゼロではないと思う。
そのような著名人や有力政治家があらわれることに都民の期待は高いと思う。しかし、選挙は手をあげないことには当選できない。その対象になる人物が現れないなかで、石原都政に対する対抗軸を明確に掲げているのは吉田さんしかいない。石原都政のどこを変えていくのか、その批判を大きくあげていくなかで、時間はないが、ギリギリまでさまざまな可能性があると信じたい。
【追記】その後の動きについて書きました
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