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2007.05.08

スカウト部長は嘘ばかり?

プロ野球・中日ドラゴンズの金本明博選手(19歳)が突如、球団によってウェーバー公示に申請された。

つまり、中日としては、あまり必要ない選手なので、ほかにほしい球団があればあげますよ、という手続きに入った。開幕して1ヶ月半という中、各球団では戦力補強は当然すんでおり、手をあげることはないことはわかっている。投手としては落第、野手として再契約しようとしている。

金本選手は、その「手続き」を経て、一般的なプロ(一軍にも出場できる70人の枠で年俸最低440万円以上)としての契約を解除され、中日球団は「育成枠」という、一軍には基本的に入れない年俸240万円以上という再契約(実質は練習生として)をしようとしている。

このようなニュースがスポーツ紙を主に報道されている。

野球ファン以外にはわかりにくい。

一軍に登録できる支配下選手枠は各球団70人までと決められており、一定の年収水準も定められている。しかし、その選手の支配下選手としての契約を解除(手続き上はウェーバー公示になり、契約を求める球団がなければ解雇)して育成枠にすれば、支配下選手枠が空き、育成枠からの他選手の契約や外国人選手との契約もできることになる。一軍登録にむけて、すでに育成枠の外国人の名前があがっている。それが、開幕して1ヶ月ちょっとというこの時期に、19歳の選手におこなわれたのだ。

金本選手は2005年秋のドラフト5位で中日ドラゴンズに入団した。高校2年、3年と連続して夏の甲子園に山形・酒田南高校の投手(エース)として出場し、いずれも3回戦まで進んだ最速146キロの投手。また、2年の夏の甲子園でホームランも放った強打の野手。この選手を中日は野手として評価し指名した。しかし、本人は投手としてこだわって、入団した。

それを当時のスポーツ紙は

◇中日・金本「野手評価ノー」投手でプロ挑戦だ(2005/12/11スポーツニッポン大阪)

◆ 新入団選手発表 ◆

 気持ちが球団に伝わった。中日が高校生ドラフトで野手評価で5巡目指名した酒田南の右腕、金本明博投手(18)が、投手としてプロに挑戦することになった。10日、名古屋市内のホテルで新入団選手発表会見に臨んだ金本は「できるところまでピッチャーをやらせてくれることになりました。球団が無理と判断するまでとことん挑戦します」と力強く言い切った。

 高校2年から背番号「1」を背負い夏の甲子園は2年、3年と3回戦に進出。二塁手としてもプレーし、昨夏は5番打者で本塁打も放った。

 1メートル75、73キロとサイズはないがMAX146キロの直球にカットボール、スライダー、カーブ、フォークと球種は豊富。中田スカウト部長は「まだまだ伸びる余地がある。いつでも野手に転向はできる」と説明。「今、戦う戦力は整っている。3年後、5年後を見すえてチームを育てていく」という落合監督の方針の下で、挑戦が始まる。 

 としている。

 この入団会見の報道が事実とし、「できるところまでピッチャーをやらせてくれることになりました。球団が無理と判断するまでとことん挑戦します」という本人のコメント、「まだまだ伸びる余地がある。いつでも野手に転向はできる」というスカウト部長の話を総合すれば、投手としてやってみてダメなら野手転向は合意としてあったということになる。ドラフト指名は2005年11月、この会見は12月、2005年11月に「育成枠」制度導入についての球界としての動きはあったが、これを金本選手に適用しようという話はこの時点では見えないし、シーズン開幕直後というのは趣旨とはあまりに乖離する。

 しかし、それが崩された。労働組合・プロ野球選手会は「「本当は明日から(試合を)やりませんよと言ってもいい問題で、これをあっさり認めると、他球団もこういう例があるということになる」(2007/4/27宮本慎也会長・ヤクルトスワローズ)とし、その撤回を求めたのに対し、セ・リーグはその公示を取り消したにもかかわらず、中日球団は、5月7日にウェーバー公示(ほかの球団への契約勧誘としての手続きだが、1週間に手をあげる球団がなければ実質的にクビになる)を再申請した。

 ポイントを3つ。
・実質1年ちょっとというプロ選手を枠の問題で排除していいのか。

・「いつでも野手に転向はできる」と言ったスカウト部長の発言は軽いのか。

・落合監督と球団はそうしなければ、夏には金本選手が整理対象(なので今回の処置で金本選手は救われるという主張)というが、あと半年間で適性を見極め、育成枠にするかどうか(あるいはこのまま支配下か)を判断すべきではないか。

 ケガの様子見や将来性(大器晩成等)などを理由に、通常の指名や契約では困難でも育成枠で拾われ、救われる選手はいると思う。しかし、18歳でドラフト指名され、野手転向も含めて認められ、プロ野球の名門球団に入って、20歳になる前に突如「育成枠」に切り下げられようとしている選手がいていいのか。

 せめて、もう1シーズン待って、誰がそれを責めようか。

 裏金問題だけでなく、嘘をつくスカウト部長はいるようだ。

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コメント

ドラファンとして、労組組合員として
複雑な思いです…。

現役である期間が、一般の職業よりも短い選手の皆さんのことを思うと
もう少し雇用する側も考えてほしいです。

おおお、あこがれのだるまちゃん(変な意味はありません)。
ドラファンなんですよね、ブログで拝見してました。
たった1年ちょいで、実質切り下げという球団ってさみしいですよね。
多くが20代でグラブやバットを置く世界とは言え、入団会見であそこまでスカウト部長が言っているわけだから。
落合さんはだったら支配下枠をなくせといいますが、現実に存在するなかで、その憂き目にあう未成年がいることを私はゆるせません。

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