「世界がもし・・・5」、おとなの都合で働かざるを得ない子どもたちの姿に
6月30日に放送されたフジテレビ「世界がもし100人の村だったら5」の録画をやっと観た。
蒸発した父、体の弱い母と兄、小さな弟を支えるために、地下15メートルの小さな穴に入って行なう金山での仕事。これを2年も続けている9歳の少年、
10歳で家族をテロや戦争から守るために銃を持ち訓練を受ける少年、
12歳で母子のために、ゴミ山で働き、いったん学校へ通ったものの、2年後にはまたゴミ山での仕事を余儀なくされ、14歳の今、12歳と5歳の弟と「仕事」をして病弱な母親との生活を支える少女。
貧困、福祉、教育・・・。
私たちが、特に富裕層がぜいたくになっていくなかで、貧困から抜け出せない子どもたち。
学校に行きたい、家族と暮らしたい、あたり前の生活を夢見る子どもたち。
番組の取り上げ方、レポートした女優のコメントに、批判もあるだろう。
私に何ができるか、見つめなおしたい。
そして貧困打開に必要な、何倍ものお金が軍事費に消え、その軍事費がこの10年で4割近くも増えているということから目を背けて、そのおとなの都合で厳しい状況におかれている彼らの状況だけを見て涙を流しても、何も始まらない。
映画ではない、フィクションではない、現実がそこにあるのだから。
◇「平和の配当」いまいずこ 世界の軍事費(2007/6/23西日本新聞社説)
東西冷戦の終結がもたらすと期待された「平和の配当」はどこに消えたのだろうか。世界の軍事費がまた増えた。冷戦終結でいったんは減りかけた各国の軍事費が、昨年は冷戦終結後では過去最高となってしまった。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が発表した2007年版年鑑によると、06年の世界の軍事支出は、総額1兆2040億ドル(約146兆円)に達した。前年比約18兆円、実質3.5%の増加である。
その半分近い46%は米国が占め、これに英国、フランスが続く。前年比11.7%増の中国が調査開始以来初めて日本を抜いて4位になった。5位の日本、6位のドイツを含めた、これら6カ国で世界の軍事費の3分の2を占めている。
とくに21世紀に入ってからの米国と中国の軍事支出増加が目立つ。
米国は01年の「9.11テロ」以降、アフガニスタンやイラクで継続している大規模な兵力展開が支出増の主な要因だが、中国の軍事費がこの10年間で倍増したのも見逃してはならない。
米中両国のこのところの軍事費増は、米ソが核兵器やミサイルなど戦略兵器を中心に軍備拡大競争を展開した東西冷戦時代と形は違うが、両国の新たな軍事力競争時代の到来さえ予感させる。
18年前、冷戦が終結したとき、世界の多くの人々は各国が軍備拡大競争の軛(くびき)から解き放たれ「世界の軍事費は減っていく」と感じたはずだ。
そして軍事費縮減分は世界の貧困や飢餓の解消、医療や教育など民生分野の費用に振り向けられると期待した。軍縮がもたらす「平和の配当」論である。
しかし、そうした期待は米国の対テロ戦争への「出口の見えない」膨大な出費継続や、中国のエネルギー資源確保を目的とした資源国への兵器輸出や軍事支援による軍事支出増などによって裏切られている。「平和の配当」いま何処(いずこ)というのが、残念ながら現実である。
世界の軍事費の5%を毎年「平和の配当」に充てれば、テロの温床の要因となっている貧困は解消されるとの国連報告もある。その「配当」を取り戻すために何より必要なのは、国際協調による軍縮システムを再構築することだろう。
軍備管理・軍縮の国際的枠組みの多くは、冷戦の緊張と戦争への不安の中でつくられた。いまの軍事費拡大をみると、冷戦の終焉(しゅうえん)で世界がそうした緊張と不安を忘れたかのようにみえる。
核拡散防止条約(NPT)の形骸(けいがい)化、ミサイル関連技術や生物化学兵器などの生産、拡散に歯止めをかける軍縮協議の停滞がそれを示している。
ここはひとつ、軍事超大国である米国を巻き込んだ国際協調による軍縮の進展を、あらためて求めたい。難題ではあろうが、それが対テロ戦争を終わらせる近道にもなるはずだ。
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