石原知事、障害児の自立を奪わないでください
石原知事が三選されて約4ヶ月、都政について取り上げてこなかった。
彼特有の都政はそうした間にも着実にすすめられている。
徹底した福祉の切り捨てが、障害児の自立を、第2のおうちを、奪おうとしていることを、3度も当選させた都民のみなさんはご存知だろうか。
対象者はごく少数、取り上げるメディアも多くはないのかもしれない。
それでも、施策の切り捨て・転換で生活や教育そのものを脅かされる人たちがいていいのだろうか。
「何が贅沢かと言えば、まず福祉」という知事がいたとしても、やってはいけないことがあるのではないか。
◇都障害児学校で段階廃止へ 自立の寄宿舎奪わないで(2007/8/11東京新聞夕刊)
自宅が遠く通学できない障害児のため、東京都内の特別支援学校(盲・ろう・養護学校)に付設された寄宿舎の段階的な廃止が進んでいる。十一の寄宿舎のうち、三月末に一つが廃止され、二〇一五年度末までにさらに五つがなくなる。年齢の違う生徒たちが集団生活をする寄宿舎は、自立に向けた教育的効果が大きく、通学圏の生徒も通ってきた。保護者らは「五輪を開く予算があるなら廃止しないで」と訴えるが、都は「通学困難の子供が少なくなった」として廃止を貫く方針だ。 (荒井六貴)
世田谷区の都立光明養護学校高等部に通う近藤紗世さん(17)は週二回、授業を終えると、車いすで隣接する二階建ての寄宿舎に向かう。
夏の初めのある日。寄宿舎には、自宅通学の生徒も含め小学生から高校生まで男女九人が泊まっていた。車いすの子がほとんど。伊豆大島出身の高校生は、ここから毎日学校に通っている。
寄宿舎に着くとまず入浴。風呂は障害の程度に対応して使いやすいように工夫され、スロープもある。トイレも形や大きさの違うものが三種類あった。指導員に車いすを押され、さっぱりとした表情で風呂から出てきた紗世さん。この日は夕食前の放送当番で、メニューを読み上げ「手を洗って集合してください」とマイクに向かった。
一階の食堂では生徒と指導員五人が集まり、にぎやかな会話が続く。自分では食べられず、指導員の介助を受ける子も多い。夕食が終わると、宿題やゲーム、合唱やカラオケをして過ごす。
紗世さんの母親の真紀さん(43)は「寄宿舎での時間は、自立生活の予行演習。食事と排せつの自立は、精神的なものが大きい。紗世は後輩がトイレに行くのを見て、自分もトイレを使うようになった」と話す。
三十年以上、障害児の世話をしてきたという指導員の女性は「家では子供が何かを言う前に、親がすべてをやってしまう傾向があるが、寄宿舎では自分でやることが増える。他人に意思を伝えることも覚える」と、集団生活の効果を挙げた。
学校教育法は一九七四年の改正で、特別支援学校に寄宿舎の併設を義務づけた。もともとは離島や遠方に住む通学困難な生徒のためだが、都教育庁学務部によると、従来は通学可能でも「生活習慣を身につける」という理由で受け入れてきた。
ところが、都は〇四年度に寄宿舎の段階的廃止を決め、今年三月末にまず世田谷区の青鳥養護学校の寄宿舎を閉鎖した。大幅な定員割れをしているというのが廃止の理由だった。都側は否定するが、十一あった寄宿舎全体で年間約十七億円かかった運営費を節減する目的もあったとみられる。
都は昨年末、寄宿舎の管理運営規則を変更。入舎の基準から「家庭の事情」「教育上の必要」の二項目を削除し、さらに門戸を狭めた。
学校教育法に反するとも思われるが、文部科学省特別支援教育課の担当者は「『特別な事情のあるとき』は寄宿舎を設けなくてもよく、生徒が自宅通学できる場合は、これに当てはまる。寄宿舎を設けるかどうかは、地域のニーズや設置者の判断」とすげない。
存続を求める保護者らは一昨年、「寄宿舎で身につく力は大きく、代わりの施設もない」と、約一万五千人の署名を添えて都議会に存続を請願した。審議は今も続く。真紀さんは「指導員のノウハウは、障害児の自立にとても貴重なのに、閉鎖で散逸してしまう。ノウハウはお金で買えないのに」と悔しそうだ。
障害児が自立へのステップを踏む場を、こんなふうに狭めていいのだろうか。都には、障害児や家族の立場に配慮するよう再考を促したい。
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