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2008.06.19

福祉・保育の切り下げ 首相に踏ん張られては困る

 国として、保育所や福祉施設の利用者一人あたりの面積基準などを保障してきた最低基準を廃止し、標準基準は示すものの、実質は地方自治体の条例などに委ねる方向が強まっている。

 このことにこのブログでも違和感を示してきた。

◇地方分権勧告―首相も首長も覚悟を示せ(2008/6/2朝日新聞社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial20080602.html

 「乳幼児は、自分で意思表示できないから、国の規制が必要だ」

 市町村が保育所を新設するときに、なぜ全国一律の基準に縛られないといけないのか。そんな疑問への厚生労働省の答えがこれだった。

 こんなとんでもない理屈でしか存在理由を示せないお役所の縛りをなくし、権限や財源を移して自治体を「地方政府」に高めていく。地方分権改革推進法に基づき、地方分権改革推進委員会が、こうした内容の初めての勧告をまとめ、福田首相に提出した。

 柱は、中央政府の仕事は都道府県に、都道府県の仕事は市に、できるだけ移していくこと。そして、政府の補助金を使った公共施設の転用や譲渡を容易にすることだ。

 来春までに国の出先機関の整理・縮小や税財源の移譲についても順次勧告する。政府は分権推進計画を閣議決定するが、当面の対処方針は6月の「骨太の方針」に盛り込む予定だ。

 勧告には、住民生活と密接な問題が数多く盛り込まれた。

 例えば、保育所や老人福祉施設の基準は、自治体が条例で独自に決められるようにすべきだと求めた。多少狭くても、預かる子供を増やして待機児童を減らす、といった選択ができる。

 補助金でつくった施設を当初の目的以外へ転用しやすくすれば、市町村合併で不要になった図書館を福祉施設にするような工夫ができる。

 今回の勧告は、住民に近い自治体の権限を強める方向をはっきり示した点で、分権を一歩前進させるものだ。

 しかし、これまでの調整の過程で、権限を守ろうとする各省の抵抗はきわめて強く、自治体へ移すべきだと主張する分権委と対立し、結論が先送りされている課題も多い。

 国道や河川の管理については、事前の折衝で国土交通省から一定の譲歩を得たが、農地転用の許可について農水省は拒否したまま。こうした未決着の点の多くで、分権委は期限を区切って結論を出すよう勧告したが、政府内での議論に委ねざるを得なかった。

 また、小さな自治体へ移譲は現実的ではないとの理由から、都道府県の権限の移譲先の多くを市に限ったことで、町村に不満が残った。

 これを実行に移せるかどうかは、政治の責任だ。各省の官僚や族議員が抵抗している項目を、骨太の方針にどこまで盛り込めるか。福田首相のやる気がすぐに試されることになる。

 知事や市町村長の覚悟も必要だ。各自治体の中には、「権限をもらっても面倒なだけ」との本音もちらつく。

 分権は、政府と自治体間の単なる権限争いではない。よりよい暮らしを実現するための統治の仕組みの大改革であり、日本の再生がかかっている。住民の側からも改革を後押ししたい。

 朝日新聞はさらに今日の社説で、方向が後退しつつあることに厳しい姿勢を示した。

◇地方分権要綱―首相の踏ん張りどころだ(2008/6/19朝日新聞社説)

 地方分権改革への各省庁の抵抗が、自民党の族議員を巻き込んで激しくなっている。

 丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長が率いる地方分権改革推進委員会が福田首相に出した第1次勧告を受け、政府として取り組む「地方分権改革推進要綱」の原案がまとまった。要綱は20日にも正式決定される見通しだ。

 丹羽氏の分権委と省庁側の意見が対立していた項目を見ると、原案は軒並み勧告から後退している。これに大きな役割を果たしたのが、本来は分権推進のために設けられたはずの自民党地方分権改革推進特命委員会である。

 農地転用の許可や、国道と1級河川の管理の権限を都道府県に移す。保育所などの施設の全国一律の基準を自治体ごとに決められるようにする。こうした1次勧告の内容に、特命委では異論が噴き出した。

 「知事が企業誘致のために転用を認めたら、優良な農地が確保できない」「河川管理を移したら、災害の時に心配だ」「保育の質の低下につながりかねない」といった具合だ。

 こうした議員の主張は、分権委での官僚の言い分と全く同じである。官僚と族議員が結託して権限を守ろうとしている構図が明らかだった。

 こんな過程をへて、事実上官僚がつくった原案は、勧告では「自治体に権限を移す」と言い切っていた表現を「検討し結論を得る」などと改めた。「検討した結果、権限は移さない」とする余地を残したことになる。

 官僚や族議員の主張は、一見もっともらしい。だれでも洪水を招きかねない河川管理はしてほしくないし、子どもを劣悪な環境におきたくはない。

 だが、そのための権限をどこに与えるかというのは、全く別の話だ。

 住民から遠い霞が関の役所が、縦割りのまま全国一律の政策を行っているのが現状だ。それよりも自治体に権限と財源を持たせた方が、地域の実情にあった行政を効率的に進められる。

 自治体が競い合えば、新たな知恵や工夫も生まれるだろう。高知県のアイデアで全国に広がりつつある割安な「1.5車線道路」はその好例だ。

 弊害が現実のものになれば、知事や市長らは選挙で責任を問われるし、住民監査請求の制度もある。霞が関や出先機関の官僚と違い、住民が直接「ノー」を突きつけることができる。

 首相にやる気があるのなら、霞が関が出してきた原案を突き返し、勧告通りの表現に直すべきだ。それが政権の改革への意志を示すことになる。

 地方分権改革は、このあと出先機関の整理や税財源の自治体への移譲といった本丸が控えている。はじめの一歩から腰が引けているようでは、官僚や族議員の抵抗をはねのけて、そこまでたどりつけるはずがない。

 自治体の判断で、狭い面積にもっと子どもたちや、高齢者、障害者をつめこむことになれば、当然質は落ちる。

 基準を独自に自治体が引き上げる努力も後退するだろう。

 このようなことを族議員や官僚の権限にこだわる姿勢とすりかえる大新聞の社説に強い違和感を持つ。

 影響を受ける人たちはたくさんいるはずなのに、この動きが強まってからは一切報じてきていない。学者のコメントすら載せない。

 急に基準が緩められ、それまで保障されてきた面積や人員配置も保障されなくなる子どもたちや高齢者も出る危険性がある。

 完全な「不利益変更」で、朝日の報道は「不利益偏向」といえると思う。

 社説が懸念する「検討した結果、権限は移さない」とする余地を残したことになる」ことに、大きな期待を寄せたい。

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今回、メールさせていただいたのは、同じように、療育や知育、
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