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2008.12.27

映画「蟹工船」一人一人が考えることをやめちゃいけない

働き方、働かせ方が問われた2008年もあと数日。

文学オンチの私には、プロレタリア文学「蟹工船」の小説があまりピンとこなくて、

このブログでは、そのコミックの単行本を紹介したりしてきた。

来年公開予定の映画「蟹工船」についても少しふれてきたけれど、

東京新聞の取り上げ方はこれまで読んだ報道のなかで一番大きい。

どんな映画になるのか、また公開時期に、働き方・働かせ方はどうなっているのか、さらにその前提として、一人ひとりが考えること、立ち上がることを積み重ねていけるのか、私たちに問われていく。

◇『蟹工船』ポップに描く 残酷でなくブラックユーモアたっぷり
(2008年12月26日 東京新聞朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2008122602000110.html

 「ワーキングプア」の象徴としてメディアで取り上げられ、ブームになった小林多喜二の小説「蟹(かに)工船」が映画化される。メガホンをとるのは海外でも評価の高いSABU監督。現代の若者に受け入れられるよう「説教くさくないポップな蟹工船」を目指しながら、「一人一人が考えることをやめちゃいけない、立ち上がらなければ」との強いメッセージが込められている。 (石原真樹)

 原作の「蟹工船」は、カニを船上で缶詰に加工する季節労働者たちが、資本家らに酷使される不条理に気付き、立ち上がるさまを描く。プロレタリア(労働者階級)文学の骨頂とされ、初版は一九二九年。五三年に俳優の故山村聡さんが映画化、DVDも販売されている。

 日雇い派遣など働いても楽にならない現代の若者の姿が「蟹工船」の労働者と重なると、同書はことしに入って爆発的にヒット。新潮文庫は累計約百六十万部のうち、ことし分が約五十四万部を占める。岩波、角川文庫も版を重ね、ほかに劇画版や関連図書が相次いで出版された。

 映画化を企画したIMJエンタテインメントの豆岡良亮プロデューサーは「現代の形容しがたい閉塞(へいそく)感を打ち破るエネルギーが『蟹工船』にあるのでは」と話す。

    ◇

 北関東にある倉庫内に船内を再現した撮影現場が今月、記者公開された。六十メートル×三十メートルの倉庫内に、船底にある労働者の寝室「糞壺(くそつぼ)」、缶詰の加工場、機関室などのセットが組まれた。船の揺れはカメラを揺らし表現するという。

 原作で「豚小屋そっくりの(中略)臭(にお)い」、労働者は「蚕のように、各々(おのおの)の棚の中に入って」と描かれた、主舞台となる糞壺。現代によみがえらせたセットはドラム缶を二、三段重ねた寝床が並び、近未来的でカプセルホテルを思わせる。「ひきこもりっぽい感じが出せた」とSABU監督。リアルに、残酷に蟹工船を映像化するのでなく、変な船での珍騒動をブラックユーモアたっぷりに描こうとする、監督自慢のセットだ。

 この日は、主人公の労働者のリーダー・新庄(松田龍平)が、労働者に自立を呼び掛ける場面を撮影中。彼らを酷使する鬼監督(西島秀俊)との対決を前に、労働者が団結する重要なシーンだ。

 撮影を始めてすぐ、「労働者の数が少なく見える」と、監督は取材に来ていた男性記者二人をスカウト、衣装を着せ顔を汚すメークを施した。「細かくカットするんじゃなくて、カメラに粘ってもらって長く撮ったらどうか」などとスタッフと相談しながら、三時間かけ、一つのシーンをカメラの位置を変えて何度も撮った。

    ◇

 裂けたシャツに、黒いつなぎズボン。囚人服のような衣装を身にまとった松田が労働者たちに語りかける言葉に胸を打たれた。

 「おれたち一人一人が本気で考え、一人一人の意思で立ち上がるんだ。そうしなければ、何も変わっていかないんだ」

 原作で小林多喜二が訴えたのは団結の重要性だった。監督のメッセージは「一人一人が考えること」だ。

 「家を買おうと考えたら、それまで気付かなかった『家売ります』という看板が突然目に入るようになるように、世界が変わる。どうしたい、どうなりたいと考えて行動すれば、何か変わるのじゃないか」と監督は語る。

 派遣社員の解雇や内定取り消しが横行する現実を変えるのは簡単ではない。だが、「弾丸ランナー」「疾走」など、一貫して「走る」というテーマを貫いてきた監督の根底には、「今を大切にすれば、未来は変わる」との思いがある。

 年内にクランクアップし、公開は来年中。作品が公開されるとき、「このころは大変だったな」と笑える世の中であることを祈りたい。

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