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2009.09.02

「感動中毒」の私たち、イライラという禁断症状

8月30日の総選挙の結果、政権交代へ。

この結果について、興味深い新聞記事を2つみつけた。

その一つが精神科医で著書も多数あり、テレビのコメンテーターとしても有名な香山リカさんの分析。

◇香山リカのココロの万華鏡:感動のない「政権交代」
(2009/9/1毎日新聞東京版)
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20090901ddlk13070242000c.html


 「歴史的」と言われた選挙が終わった。詳細な結果分析にはもう少し時間がかかるだろうが、若い人たちの関心はどれくらい高かったのだろう。

 まわりの数人にきいてみたら、「マイケル・ジャクソンや酒井容疑者に比べていまひとつ……」といった意見に交じって、「オバマさんの時ほどは燃えなかった」という声があって驚いた。「そっちは参政権もないアメリカの話だよ」と言うと、かえってきた言葉は「だってオバマ大統領って物語があるもの。感動したなあ」

 個人の物語のないところには、感動もない。そして、感動が得られないものには、関心も持てない。そういう理屈なのだろう。たしかに、マニフェストをよく読んでもそこに感動はないかもしれないが、ただそれだけの理由で「日本の選挙に関心が持てない」と言いきってしまってよいのだろうか。もちろんよいはずはないのだが、「もっと感動させてよ」と言いたげな若者に、どういう言葉で説明すれば納得してくれるのだろう。私は口をつぐむしかなかった。

 それにしてもいったいいつから、私たちは「感動中毒」になってしまったのか。テレビを見ても書店に行っても、「泣けるドラマ」「あの女優も泣いた!感動の一冊」といったフレーズがあふれている。「しみじみ心に染みる」とか「静かな気持ちになれる」といった作品は、いまや、はやらないのだ。

 感動して泣くと、たしかに心はいっとき解放され、すっきりと浄化したような気にはなれる。しかし、その浄化作用は長くは続かず、またすぐ次の“感動”がほしくなる。そして、いったん“感動”“号泣”で悩みやストレスが浄化されることを覚えると、時間をかけてゆっくり考え、少しずつ問題を解決していくことができなくなる。「そんなわかりにくく、まどろっこしいことは耐えられない」となるのだ。

 4年前の総選挙の「刺客対決」にせよ、マイノリティーから大統領に上り詰めたオバマ氏にしても、ドラマの要素は大いにあった。しかも、そのドラマは個人の人生に基づいた私たちにもわかりやすいドラマであった。

 それに比べると、「政権交代」も大きなドラマには違いないが、感動を呼ぶような人生のドラマが山のようにあったわけではない。そうなると、とくに若い人は「それよりは薬物に手を出した芸能人たちのドラマのほうが……」となってしまうのだろうか。政治が変わる中、「瞬間的な感動にしか興味が持てない」という私たちの意識も変えていかなくてはならない。

実際に、投開票日当日の午後8時前後から民放各局は選挙特番で、出口調査をもとにした議席予想の発表や注目候補者の密着取材の放送を行った。一方、日本テレビは24時間テレビのマラソンの最終盤を放送。ランナーがゴールへたどりつけないなか番組は9時で終了したが、8時から9時まで31.1%の視聴率を稼いだ一方で、NHKの開票番組が24.7%となったものの、民放はいずれも9時までは二桁にとどかず、民放各局の視聴率をあわせても日本テレビの24時間テレビの最終盤の視聴率に届かなかったようだ。

筋書きの今後がみえない政治よりも、筋書きがみえていても「泣ける」「感動」が保障されるほうを選んだのか。

そんな私も、今回はみていないが、過去の24時間テレビの西村知美さんのゴールなどをみて、何度も泣いているのだが。

用意された「感動」をほしがる私たち。一方で、貧困・格差・分断のなかでギスギスしたイライラという禁断症状が進行していないか。

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コメント

こんばんは。

香山リカは面白いですね。
今、「しがみつかない生き方」(幻冬舎新書)を読んでいますが、なかなか興味深いです。

日本テレビの24時間テレビは、感動の押し売り的なところが鼻について近年は見ていなかったのですが、今年のマラソンランナーのイモトアヤコは地元の出身なので、私も8時から9時までの視聴者の一人でした。

確かに今回の政権交代は、郵政選挙やオバマ政権誕生の時ような、熱狂的なものではなかったように思います。
しかし、熱しやすく冷めやすいのが、日本人の気質とも言われます。
新政権には、一時の熱狂ではなく、着実な国民生活の向上を期待したいと思います。

PS. tamyさんの、五輪招致関連の記事にも期待してます。

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