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2009.10.14

親の会が保育の国の最低基準の堅持・向上を求めてアピール

保育所や高齢者施設などの一人あたりの面積、職員配置など、最低これだけないといけないとする国の基準を廃止して、地方自治体が決めれば今よりも切り下げていいとする流れが急激に強まっている。数十年変わらなかったものを、年内にも緩和する方針が報じられている。

10月7日に地方分権改革推進委員会が第3次勧告をまとめ、8日に鳩山首相に提出したが、それを待たずして、前日の6日にまさに「政治主導」でこれらが推進されるよう、原口総務大臣と鳩山首相が会談し、総務大臣はその調整にむけて指示を出した。

さらに鳩山総理は勧告をうけて10月8日の談話で
「勧告が最大限実現されるよう、内閣を挙げて速やかに取り組む所存である」とした。
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/08danwa.html

地方分権改革推進委員会
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/iinkai-index.html

私は、明確に反対する。

かなり長文になるけれど、単なる政治主導でなく、現場主導のもとでの政治主導であるべきだということを強調したい。

党派性のない保育園を考える親の会がこのタイミングで動いたことはとても大きく、民主党を中心とする政権、特に福島みずほ少子化担当大臣や原口総務大臣、長妻厚生労働大臣は、現場主導が大事であることと、連立合意との矛盾、さらに民主党総選挙前の7月に公立保育園の民営化を考えあう団体(「ほうんネット」の公開アンケートに「保育サービスについての考え方」)にいまの流れとちがう主張をしていたことを重くうけとめてほしい。

***
保育所:政府、設置基準規制を緩和へ 待機児童解消狙い(毎日新聞2009/10/12)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091012k0000m010119000c.html

 政府は11日、認可保育所の設置基準などの規制を緩和する方針を固めた。国が地方自治体の業務を法令で規制する「義務付け・枠付け」の大幅な見直しを求めた地方分権改革推進委員会第3次勧告を受け、保育所については自治体が設置基準を条例で自由に決められるようにする。11月までに必要な法令の改正を整える方針で、自治体の条例改正が進めば、早ければ年内にも実現する見通しだ。

 民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ「保育所の待機児童の解消」が期待されている。

 保育所の設置基準は、児童福祉法に基づいて厚生労働省の省令「児童福祉施設最低基準」で規定されている。例えば、2歳以上の幼児が入所する保育所は(1)保育室か遊戯室(2)屋外遊戯場(3)調理室(4)トイレ--の設置が義務付けられ、保育室の面積は幼児1人について1.98平方メートル以上、屋外遊戯場は1人につき3.3平方メートル以上など細かい規定がある。

 自治体からは「保育所の設置環境は地域で異なる。地域の実情に応じて運営できるよう、施設の基準設定を市町村に移譲すべきだ」(全国知事会)などの声が強まっていた。分権委も8日、国による保育所の設置基準が不必要な「義務付け・枠付け」だとして、廃止や見直しを求める第3次勧告を鳩山由紀夫首相に提出した。

 政府は、保育所の基準緩和を早期に実現できないかを検討。長妻昭厚労相と原口一博総務相が9日に協議し、厚労省令の改正を検討する方針を確認した。保育所の設置基準のほか、省令で乳幼児の年齢ごとに細かく規定されている保育士の配置人数についても、見直しを検討する。

 厚労省によると、待機児童は都市部に集中し、全待機児童数の8割程度を占める。都市部では、保育室の面積や屋外遊戯場を十分に確保できず、認可保育所が増えにくいため、待機児童の増加につながっているとの指摘もあった。【石川貴教】

 【ことば】▽待機児童▽ 保育所に入所を申し込んでも満員で入れない児童のこと。09年4月時点(2万5384人)では前年比で3割増となり、同方法で統計を取る01年以降最高となった。自民党政権時代の08年、政府は10年間で利用者を100万人増やす「新待機児童ゼロ作戦」を発表し対策に乗り出したが、効果はまだ出ていない。
***

これに対して、厚生労働省が新たな保育制度の設計にむけて論議をすすめている審議会でも意見を聞かれたこともある影響力のある親の会が、明確な反対のアピールを示した。

***
認可保育所:設置基準緩和 民間団体が反対のアピール発表
(毎日新聞 2009年10月14日 19時10分 最終更新 10月14日 19時32分)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091015k0000m040040000c.html

 民間団体の「保育園を考える親の会」(事務局・東京、普光院亜紀代表)は14日、認可保育所の設置基準を緩和する政府方針に反対するアピール文を発表した。子どもの発達を保障するため、国基準を堅持するよう求めている。

 政府は、地方分権改革推進委員会の第3次勧告を受け、待機児童の解消につながるとして、保育室の面積などを自治体が自由に決められるよう検討している。「親の会」は「現行の国基準は最低限守るべきもので、先進国と比べ最低レベル」と指摘し「狭いと子ども同士のトラブルも増える。『詰め込み』による待機児童対策は子どもたちの将来に禍根を残す」と反対している。
* **

***

保育園を考える親の会ホームページ
http://www.eqg.org/oyanokai/
保育所にかかわる国基準の堅持・向上を求める緊急アピール
(保育園を考える親の会2009/10/14PDFファイル)
http://www.eqg.org/oyanokai/kunikijunkenjikoujou.pdf

***
平成21 年10 月14 日
保育所にかかわる国基準の堅持・向上を求める緊急アピール
http://www.eqg.org/oyanokai/kunikijunkenjikoujou.pdf
保育園を考える親の会
代表 普光院 亜紀
 
私たちは、子どもの健やかな発達を保障するために、保育所にかかわる国の最低基準(児童福祉施設最低基準)の堅持および向上を求めます。

【現行の国基準は「最下限」です】
 地方自治体が主体となって、地域の実情に合わせた子ども施策を行うことが必要であることは、否定するものではありません。しかし、現行の国基準は、子どもの発達を保障する「最下限」のものであり、先進諸国で保育施設について設けられている基準と比べても(*1)、施設保育・子どもの発達に関する既存研究(*2)から考えても、これを下回る環境では、子どもたちの健やかな発達を保障できないことを、考慮する必要があります。

【待機児童対策が求められる今だからこそ】
 都市部の待機児童問題は、一刻も早く解消しなければなりません。とはいえ、国基準以下の保育条件となり、働くために、子どもたちにとって望ましくない環境を選択せざるをえなくなることは、保護者の本意ではありません。子どもにとって最低限である国基準を満たした保育施設を、緊急にふやしていただくことが必要です。自治体が財政優先になり、「詰め込み」による待機児童対策に流れることは、子どもたち、すなわち日本の将来に禍根を残すことになります。(*3)

【自治体の創意工夫とナショナルミニマム】
 保育所施策、子育て支援施策に関しては、現在も、自治体ごとに独自の施策が行われています。特に、国基準の人員配置では不十分であるため、財政に余力がある自治体では、独自に人員の上乗せを行っています。保育時間の長時間化、養育困難や虐待への対応、地域の子育て支援などの地域のニーズに応える施策も、自治体ごとに取り組まれています。このような本来あるべき自治体の創意工夫に対して、国の基準は邪魔になるものではありません。
 一方で、国基準が低いために、施設・人員配置の整備を積極的に行える自治体とそうではない自治体の間には、保育の質や機能の面で、地域格差が発生しています。
 このような実情を見ても、国基準を向上させ、日本どこでも、子どもたちが健やかに育つことができる環境を、国が財源も含めて保障し、その土台の上に、自治体が、地域の実情に合わせ、それぞれの保育施策・子育て支援施策を築いていくことが望まれます。
 低い基準ではありますが、国基準がここまで、日本の保育の最低ラインを守ってきた実績は評価されるべきです。自治体の財政事情、事業者の経営事情で、子どもの発達保障の最低限度を下回る保育とならないよう、国基準には、子どもを代弁して、その願いを守る役割があると考えます。

* 1 「機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業」(全国社会福祉協議会)で先進諸国の面積基準および人員配置基準の文献調査を行ったところ、日本の基準は、最底辺に位置していた。

* 2 1960 年代に、国の人員配置基準が大幅に改善されたが、この背景には、施設での子どもの死亡率の高さ、発達の遅れなどの原因を調査したWHO の研究報告があった。最近のアメリカ等での乳幼児期の子どもの発達・就学前教育に関する調査研究においても、養育者(保護者・保育者)のこまやかな関わりが、子どもの発達に大きな影響を与えることが、次々に明らかにされている。

* 3 保育者の人手が薄く、狭小な認可外施設で、1つのベビーベッドに乳児を2人ずつ寝かせ、目を離しているうちに死亡した事故も記憶に新しい。また、国基準よりも面積基準が緩和されている自治体助成の認可外保育施設で、十数人の赤ちゃんが過密に収容され、目が届かず、動き回ると面倒なためか、テレビを見せられて保育されている状況等も、会に報告されている。

■問合せ先 保育園を考える親の会 代表事務所 TEL&FAX 03-6416-0721
*保育園を考える親の会は、仕事と子育ての両立を支え合う保育園保護者のネットワークです。
***

民主党は確かに先の総選挙のマニフェストで地方分権を掲げた。

しかし、いまの認可保育所や高齢者施設などの面積や職員配置よりも低い水準を自治体が認めればそれでいいとすることを有権者や民主党支持者はいいとしただろうか。政策論争として深められただろうか。

そもそも、総選挙後の連立政権の合意や、総選挙前の民主党の「考え方」と、今回の方針が大きくかけ離れているということを指摘しておきたい。

***
「保育所の増設を図り、質の高い保育の確保、待機児童の解消につとめる」
(2009/9/9連立政権樹立に当たっての政策合意)
http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/other/090909_3party.htm
***

***
民主党:保育サービスについての考え方
(2009/7/1民主党)より抜粋
http://www.dpj.or.jp/news/?num=16422
「住む地域や家庭の状況などにより、保育に格差を生じさせることのないよう、個々のニーズに合わせた保育の量の確保とともに、子どもたちにとって質の良い保育の環境整備や子育て支援を進めていく必要がある。保育制度の改革にあたっては、保育の質の確保が大前提であり、国や地方公共団体は質の高い保育を十分提供するため、優先的に財源を確保すべきである。安易な規制緩和等によって質よりも量を追い求め、結果的に子どもに不利益を与えるようなことがあってはならない。 また、現在国が設けている保育室の面積や保育士の人数などの最低基準についても、子どもたちに良質な保育を提供する視点で改善することが必要であると考える。」
***

所属団体などに頼らない、新たな多くの保育・福祉関係者が声を官邸や厚生労働省、内閣府(少子化担当)、総務省などに声を届けること(ネットで簡単にできる時代ですよ)での現場主導をいまこそ。

下記サイトからは、省庁などをこえて、一括して意見をメールフォームで送ることができます。ぜひ活用を。

各府省への政策に関する意見・要望
https://www.e-gov.go.jp/policy/servlet/Propose

***

〔関連情報〕

保育所2割広くすべき?専門家は提言、待機児解消には壁(2009/6/2asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/0602/TKY200906020146.html

上記asahi.comの記事(2009/6/2朝日新聞夕刊)にあるように、日本の3歳児以上の子どもたちは、フランス・パリの子どもたちの三分の一の面積で保育されていることになる。基準の引き上げと、圧倒的に足りない特別養護老人ホームと保育所を大幅にふやすことを公共事業の中心にすえることを求めたい。

徹底して「科学的根拠がない」として基準の廃止を求めてきた地方分権改革推進委員会、特に基準の「解体」にむけて中心的な役割を果たしている猪瀬直樹委員(東京都副知事)がこの報告書についてどう反応するのかもチェックしていきたい。

朝日新聞が記事中でふれた報告書は以下のもの。

機能面に着目した保育所の環境・空間に係る研究事業総合報告書
(社会福祉法人 全国社会福祉協議会 児童福祉部)
http://www.shakyo.or.jp/research/09kinoukenkyu.html

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よく見に行くブログで知りました。 「Tamyレポート」: http://tamy.way-nifty.com/tamy/2009/10/post-6484.html このところの保育所の最低基準の規制緩和の動きに対して、「保育園を考える親の会」が「保育所にかかわる国基準の堅持・向上を求める緊急アピール」を出しま... [続きを読む]

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