私たちは沖縄を「見せ物」にし続けていないか
というと、表現として、かなり厳しいとは思う。
しかし、差別され続けている側と、差別していることに気づかないか、気づいていないフリをしている私たちという構図がはっきりしてきたなかで、あえてそう書かずにはいられない。
5月18日付・毎日新聞の記者コラムを読んで、大切なことをまったく知らなかった自分にショックを受けた。
沖縄と基地問題について、6年近くやっているこのブログで、ある程度書いてきたと思ってきたけれど、たった700字ほどのコラムから、教えられたのは「沖縄差別」の歴史だ。
歌と踊りが似合い、「なんくるないさー」とがんばってきた沖縄の人々の心に刻まれた差別が、戦中・戦後だけでなく、戦前に深くあったことを私たちはどれくらい知ってるだろう。
見せ物小屋に沖縄の人が入れられていたことを、いまのオジイやオバアの、さらにそのオジイやオバアは怒りとして、心に刻んでいたはず。
「見せ物」は、たった約100年前に起きたこと。そのことを知らなかった。
さらに、その前にもその後にもさまざまな差別が起きてきた。
しかし、それでも、少女暴行やヘリ墜落など、衝撃的な事件のときに、私は怒り、そして涙を流し、そしていつのまにか沈静化し、また次の衝撃が起こるその時までは他人事として過ごしてきた。結果として、消化してきた事実は否めない。
誤解を恐れずに言えば、
私たちは、沖縄を非日常としての存在として、いまだに見せ物にし続けていることにならないか。
または、「泣ける映画」のように、感動し、消化して、また次回作を観るような。
事実をもって、約束を守らない政権の責任を問うこと、そして沖縄の歴史、米軍基地のあり方などを立体的に報じないマスコミを批判することは大事だと思う。
ただ、同時に、誰かのせいだけにする安易さには、うんざりもする。
ネットでメールやブログ、そして会話など、伝えることのできる手段はむしろ広がっているはず。
無知は罪、という人がいるが、
もしそうであれば、
知ったのに、知らせないことは罪にはならないのか。
伝えようとしなければ、伝わらない。
伝わらなければ、「無知は罪」のままで、「対岸の火事」となっている差別は続く。
怒りと自戒をこめて。
***
◇発信箱:沖縄差別=三森輝久(西部報道部)
(2010/5/18毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20100518ddm004070123000c.html
地盤が崩れかねないほどに、地下水位が上昇しているように思えてならない。沖縄の怒りは、これまでとは違う。「沖縄差別」。沖縄で公然と語られるようになったこの言葉が、その増幅を如実に物語る。沖縄戦で本土防衛の「捨て石」にされ、戦後は日本から切り捨てられて米軍に支配され、取り上げられた土地にできた基地は今も変わらない。もっと以前。1879年の琉球処分後しばらく、沖縄人は県の要職につけなかった。
国家レベルだけでなく、民衆間でもそれはあった。1903年、大阪で開催された「勧業博覧会」会場前の見せ物小屋「人類館」に沖縄女性2人が「陳列」された。無知は遠い過去だけでもない。知人の女性は、進学した東京で「日本語が上手ね」「豆腐、食べたことある?」と言われた。本土復帰から10年が過ぎたころの話だ。
「沖縄差別」は、公の場で首長たちが口にすることはほとんどなかった。地元の新聞記者もその言葉を控えていたように思う。口にした途端、感情論にすり替えられ、負担の不平等という基地問題の本質が隠されかねない。そう恐れたからだ。
だが、規制線は溶解した。心の底にあった意識を呼び覚ましたのは政府と本土だ。普天間飛行場移設の矛先を県内へと戻した政府に、訓練移転に対する本土の反発。国の沖縄振興計画を「社会資本を見違えるようにしてもらった」と評価する仲井真弘多(なかいまひろかず)知事でさえ、4月25日にあった普天間の県外移設を求める県民大会で、基地負担の重さを「差別に近い」と発言した。自民党の選挙を支え、基地を容認してきた人たちにも「差別」の言葉が漏れるという。
本土復帰38年の15日、地元紙琉球新報の社会面トップ見出しに「変わらぬ差別」とあった。
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