日本代表の快進撃の影響は
もうすぐワールドカップもおわり、祭りのあとに。
すでに、梅雨、暑さ、寝不足、人身事故などによる通勤電車の遅れなどなど、
イライラしてませんか。
私自身は、日本代表戦しか興味がないので、もう終わってますが。
鋭く冷静な分析にいつも感心させられる香山リカさんのコラムは、やっぱりさすが。
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◇香山リカのココロの万華鏡:快進撃の影響は
(2010/7/6毎日新聞東京版)
http://mainichi.jp/area/tokyo/archive/news/2010/07/06/20100706ddlk13070196000c.html「ワールドカップ、日本チームの快進撃が人々に与える影響は?」
こんな質問を何人かの知人や編集者から受けた。サッカーにくわしくない私は、「予想以上のがんばりにみんな興奮したり寝不足になったのでは?」などとあたりまえの答えしかできないのだが、そうすると相手は不満そう。
「いや、そんなことじゃなくて、心理面への影響ですよ。うつ気味から明るい気持ちになれる人が増えるとか、社会全体が自信を回復して経済成長につながるとか……」どうも多くの人が、「サッカーを超えた大きな効果」を期待しているようなのだ。
もちろん、彼らの活躍に「よし、私もがんばろう」と元気を回復させた人や夢を持って努力することの大切さに気づいた人も少なくないだろう。暗い話題が続く中の久々の明るいニュースに気持ちが前向きになれた、という声もある。とはいえ、これで社会のムードも人々のうつ気分もすべて解消、政治や経済の世界にまでプラス効果がある、と考えるのは、あまりにもムシのいい話。社会はそんなに単純ではない。
それよりむしろ心配なのは、日常のしんどさから逃れるために、すべてを忘れてサッカーにのめり込んでいる人がいるのではないか、ということ。実際に診察室でも、「うつ病も回復してきたし、そろそろ求職活動を始めましょうか」と声をかけて、「ワールドカップで昼夜逆転の生活なので、いまは無理ですよ!」と“逆ギレ”されたことがあった。
“お祭り”にのめり込み、そのあいだはいっさいほかのことを考えない。これから連想するのは、リオデジャネイロのカーニバルと市民たちのことだ。彼らの多くは、ふだんの生活で苦しいこと、つらいことがたくさんありすぎるので、数日間のカーニバルのために1年をかけて準備をし、そこで完全燃焼すると言われている。もしかするといまの日本も、それに近い状態になっているのではないだろうか。
ワールドカップで盛り上がるのは、やっと日本にもサッカー文化が定着してきたからか。それとも、経済的にも社会的にも問題が山積の南米社会に近づいてきた、ということなのか。「そんなふうに悲観的に考えることじたい、問題なんだよ。サッカーはサッカー、楽しめばいいじゃないか」という声も聞こえてきそうだ。そう、サッカーはサッカー。そこから「心理面への影響」だとか「社会全体への効果」などを考えずに、素直に世界一流のテクニックに酔えば、それでいいのかもしれない。
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