制度の「改革」なのか、マスコミ報道続く
本当に改革なのか。
このところ、新聞紙上でも保育制度にかかわって、すすめられようとしている「改革」への警鐘がつづく。
保育所が足りない中で、優先しなければならない人の権利が奪われてしまわないか。
そう思えてならない。
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◇保育制度:どう変わる 13年度実施目指し基本案
(2010/7/16毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20100716ddm013100133000c.html
国が13年度からの実施をうたう「子ども・子育て新システム」の基本制度案がこのほどまとまった。出産から子育てまで切れ目のない支援を提供し、少子化対策の充実を図る考えだが、これまでの保育制度は大きく姿を変えることになり、現場からは混乱を心配する声も上がっている。新制度の中身と予想される影響を探った。【山崎友記子】◇幼保一本化し「こども園」/「指定制」で新規参入促す
新制度では、就学前の子どもが利用する幼稚園、保育所、認定こども園の垣根を取り払って「こども園(仮称)」に一本化する方針だ。現在、主に専業主婦家庭が利用し、保護者が自由に選ぶことができる幼稚園に対し、国が基準を定めている認可保育所は、市町村が申し込みを受け付け、入所の可否や入所先を決めている。日中の育児が難しい家庭の利用が優先で、両親ともフルタイムで働く家庭に比べ、勤務時間の短いパートや求職中の親は優先度が低く、入所が難しかった。
新制度では、親の働き方にかかわらず、保育サービスを受けやすくする。市町村は、親の就労時間などに応じて、週に何日、1日当たり何時間の保育が必要かなどを認定。親は認定に基づき、希望する園に直接申し込み、利用契約を結ぶ。
保育サービスの利用機会や選択肢が広がる半面、もともと保育所が不足し、待機児童が多い都市部などでは、入所申込者が増えることで、混乱も予想される。
今春、1歳の長男を保育園に入所させた東京都大田区の非常勤職員の女性(35)は「今も入るのが大変なのに、直接申し込みになったら、どこが入りやすいか情報を集め、保育園を何カ所も回らないといけないのか。多様な選択肢より、子どもを安全、確実に受け入れてくれる方が大切」と訴える。
園との直接契約に不安を感じる声も上がる。江東区の会社員の女性(40)は今春、保育園に通う長男(2)のけがを巡り、園の経営者と話し合いを続けるうち、暗に退園を迫られたという。
女性は「今は区が入所決定しているから、簡単に退園させられないだろうが、園が決定権をもったらどうなるのか」と懸念する。女性はシングルマザーで、保育所は生活に欠かせないものだ。しかし、園が利用者を選別するようになれば「収入が不安定」などの理由で入園を断られるのではないか、など不安は尽きない。
◇
一方、新制度では、受け入れ先の増加を目指した仕組みを設ける。こども園や各種保育サービスに「指定制」を導入して、NPO法人や株式会社なども保育分野に参入しやすくする。
現在は、国の基準を満たしている保育施設でも、都道府県の判断で認可しないことが可能。公費が入る認可保育所が増えれば、自治体の財政負担が増えるからだ。指定制では面積や人員配置など一定の基準を満たせば、例外なく認められるようになる。厚生労働省の担当者は「自治体は保育サービスを増やさざるを得ない状況になる」と説明する。
ただ、新制度案は、必要な予算額や裏付けとなる財源は説明していない。施設数やサービス量を増やすには財源確保が欠かせず、「現状では、施設の増設は進められない」(東京都区部の保育担当職員)との声が大勢を占めており、財源面から新制度の実現を疑問視する関係者は多い。
また、50カ所以上の認可保育所を運営する株式会社JPホールディングスの山口洋社長は「指定制の具体的な中身が見えない。財源も示されないままでは事業者も動けないだろう」と話す。保育事業への新規事業者の参入も簡単ではなさそうだ。
また保育施設での子どもの事故に詳しい寺町東子弁護士は「参入を緩和するなら、施設への指導監視を強化するとともに、適切な人員配置ができるよう十分な公費投入が必要だ」と質の確保を訴える。
国や地方の予算が限られる中、サービスの量と質を確保して13年度に新制度に本当に移行することができるのか。具体的な議論はこれからだ。
◇「子ども家庭省」創設、市町村の権限拡大も
「新システム」の基本制度案は、すべての子どもや子育て家庭を対象に、子どもの成長を社会全体で支え、仕事と家庭の両立を実現することなどを目標に掲げている。具体的には、保育園は厚生労働省、幼稚園は文部科学省とバラバラになっている行政を、子ども家庭省を創設して解消するとともに、国の補助金や子育て関連の拠出金を一つの基金にまとめる。
また、子育て支援の実施主体を市町村に集約。子ども手当や保育サービスの組み合わせ(配分)を、地域のニーズに合わせて設計できるようにする。例えば、子ども手当の政府の支給基準が1人あたり1万3000円でも、市町村の裁量で手当の金額を上乗せすることも可能になる。
利用できるサービスや現金給付は、子ども手当や妊婦健診などの基礎部分と、必要に応じて使い分けることができる保育・幼児教育や育児休業給付などの二つに分類する計画だ=図参照。
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