何か事件が起きたとき、また身近でトラブルがあったとき、その背景に迫ることがたいせつなのでは・・・。
ブログを始めてまもなく6年。その思いは日増しに強まっている。
あの児童虐待死事件。母親は責められて当然だ。
でも、保育所入所のこと、生活保護のこと、おそらく知らなかったはず。
20歳前後で離婚して、突然一人で子どもを抱えることになり、
専門的な資格を持たない人がどれだけの職業選択の自由を担保できるのか。
また、離婚当時は夫婦で書類を出したと伝えられているが、
子どもの育ちの確認は、公としてどうしてされないのだろう。
10代や20代前半で、結婚し、専業主婦になって、
事情でシングルマザーになったとき、仕事や生活に困るのは目に見えているのに。
終身雇用が崩れているいま、なければ生活の根幹にかかわる職業訓練や保育施設はどうして充実されないのか。
生活のために離婚できず、イヤでも婚姻状態を続けざるを得ないことが、また新たな虐待や事件、ゆがみにつながらないか。
このように書くと、考えすぎだとの批判もあるようだ。
それでも、考えすぎずにはいられない。
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◇児童虐待 シングルマザーのつぶやき…
(神戸新聞2010/08/24 11:55)
「自分とあの人、似てるかも」。大阪市内のマンションの一室に、幼い姉弟が置き去りにされ、遺体で見つかった事件。逮捕された若い母親について、神戸市内のあるシングルマザーはつぶやいた。一人きりの子育てに行き詰まり、投げ出した責任はあまりに重大だが、どこかで自分自身と重ね合わせていた。「みんなしんどい。魔が差して逃げ出したくなるときもある。それを必死にこらえている」(黒川裕生)
神戸市の田中初美さん(24)=仮名=は2年前に離婚し、当時1歳と3歳だった2人の息子を引き取った。おむつ替えや入浴、食事作り。毎日毎日同じことの繰り返しで、家から出ることもままならなかった。仕事に就けず、友人にも会えない。
「子育てって面倒くさい」「さぼっても誰にもばれない」「子どもさえいなければ…」。そんな思いが頭をよぎるたび、自己嫌悪に陥った。
「母親であると同時に、20代前半といえばまだ遊びたい盛り。『子どもが1番』と考えることで、ネグレクトしそうになる自分を必死に抑えていた。彼女も途中まではそうだったはず」
西山育栄さん(26)=仮名=は今年5月に離婚し、1歳の長男と宝塚市で暮らす。息を抜けない育児やゆとりのない生活。将来の不安を抑えきれず、思い詰めてしまうこともある。
「だからこそ、子どものために頑張れるのが母ではないか。子どもを置き去りにするなんて理解できない」
西山さんは7月末から女性の起業スクールに通う。収入はハローワークの訓練・生活支援給付金と子ども手当などで、月約10万円で生活する。託児可能なスクールと出合えた分、負担は幾分軽くなったが、あらためて感じたのは、ひとり親への支援の乏しさだ。
「経済的に行き詰まることの多いひとり親は、社会的な保障が頼みの綱。例えば、離婚届を提出する時点で、行政などから何らかの支援策を示されれば助かる人もいるはず」と訴える。
厚労省の統計では、ひとり親の平均年収は全世帯平均に比べ著しく低い。特に母子家庭は200万円強で、全世帯の約560万円(2005年)を大きく下回る。子どもを預けて働きに出ようにも、都市部の保育所や児童養護施設は入所人員が定員に近く、すぐに利用できるとは限らない。こうした「負のスパイラル」が、虐待の一因となる危険性も指摘されている。
【家庭だけに委ねず 甲南大 森教授】
わが子への責任感、「私がやらなければ」という意地。離婚後の子育てにはそうした思いが交錯するという。兵庫県の児童虐待防止専門家会議議長を務めるなど虐待問題に詳しい甲南大学文学部の森茂起(しげゆき)教授(55)は「ひとり親に見られる『できるだけ自分で』という覚悟は危険な側面がある」と指摘する。
虐待は育児の負荷が引き金で起きやすい。「子育ては親がすべき」という思いが強いほど、周囲に支援を求めることにためらいを感じる傾向がある。シングルマザーの田中さんは実家に頼ることができず苦しんだ。「いつか育児放棄をしてしまうのではないか」という恐れが自分の中にあったという。
森教授は「子育てを家庭だけに委ねるのではなく、ある程度は社会が担うように仕組みを変えるべきだ。平日は子どもを施設に預けて仕事に専念し、週末に会うような親子の形があってもいい。自立への後押しにもなり、良い関係を築ける」と従来の形にこだわらない子育てを促す。
そのためには保育所や児童養護施設を増やし、NPO法人などが取り組んでいる地域の子育て支援の拡充が欠かせない。「隣人や親族との関係が希薄になる中、子育てを家庭だけに押しつけるのは酷。子どもを預けるのは無責任でも恥ずべきことでもない、そんな意識を皆が共有してほしい」とする。
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