日弁連、決議で保育制度の規制緩和路線に転換求める
日本のすべての弁護士が登録している、
日弁連(日本弁護士連合会)。
http://www.nichibenren.or.jp/
その日弁連が10月8日、第53回人権擁護大会を開き、
「貧困の連鎖を断ち切り、すべての子どもの生きる権利、成長し発達する権利の実現を求める決議」
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2010_1.html
を採択したという。
そのなかで、保育分野の規制緩和の動きについて強い懸念を示し、転換と充実を求めている。
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提案理由
第3 子どもの貧困問題の要因
3.脆弱な社会保障
(2) 保育
政府は、近年、保育政策でのコスト削減を優先させてきた。その結果、働く母親が増えたことなどによる需要の増大にもかかわらず、認可保育所数は微増にとどまった。保育が必要であるのに保育を受けられていない待機児童数は、この10年間、増加傾向にある。貧困のため働く必要から子どもを保育所に入所させようにも、認可保育所への入所は容易ではなく、さらに認可外保育施設は費用負担が大きく、その費用をまかなうことは困難である。
また、保育分野でも規制緩和政策が推進され、定員超過の容認や保育士の非正規化、保育施設設置への株式会社参入の促進のみならず、保育施設の最低基準の一部の撤廃・地方条例化が進められようとしている。これらの政策は、保育の質の低下を招き、子どもの成長と発達に重要な意義を有する保育の機能を弱めることとなる。
さらに、保育の市場化に向けて、保育の実施義務を廃し、保育の公的保障の責任を放棄しようとする動きもあり、このような責任放棄は、子どものいのちや健康を脅かすものとして強く懸念される。
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第5 提言
3 保育を受ける権利の保障
乳幼児のいる親が貧困から脱するために労働したり求職活動をしたり職業訓練をしたりするには、保育が必要不可欠である。にもかかわらず、保育施設の不足は深刻であり、量的な拡充がなされなければならない。しかし、それだけでは子どもの貧困の解決に向けて保育の機能を十分に発揮することはできない。保育とは、乳幼児期の子どもが、安全に、安心して生きていくこと及び成長発達していくことを保障するための営みをいう。憲法13条、25条、26条及び子どもの権利条約によって、子どもには、保育を受ける権利が保障されている。
乳幼児期の子どもに対し、できるだけ早期に良質な保育を保障することによって、その後の成長発達に良好な影響を与えることが、欧米での数々の研究結果で明らかになっており、良質な保育の保障は、貧困の連鎖を断ち切るための大きな力となる。
政府及び自治体は、保育を必要としているすべての子どもに保育を実施する仕組みを作らなければならない責務、すなわち保育の公的保障の責任を負う(児童福祉法24条本文)。同規定は堅持されなければならず、同旨の規定が幼稚園・認定子ども園を含むすべての保育施設について規定されるべきである。
政府は、現在進めている最小のコストによる保育政策を直ちに転換させ、保育の質を向上させるべく、保育分野での規制緩和政策を転換し、保育施設の最低基準を堅持・充実させなければならない。
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この決議を力に、その力をみなさんとあわせたいです。
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