だいじょうぶ
チリの落盤事故、全員生還のニュースをうけて、どうとらえたらいいか。
なかなか頭のなかの整理ができず。
そんななか、やっぱりこのコラムがヒントを教えてくれているような。
***
香山リカのココロの万華鏡:「なんとかなるさ」 /東京
(2010/10/19毎日新聞東京版)
http://mainichi.jp/area/tokyo/archive/news/2010/10/19/20101019ddlk13070219000c.html
作業員33人全員が無事、救出されて幕を閉じたチリの落盤事故。ほとんどが身体的にも心理的にも健康な状態で、医療を受ける必要もなく自宅に戻ったという。「どうしてあんなにタフなのだろう」と驚いた人も少なくないのではないだろうか。そこには「チリ人の国民性が関係している」という説もある。この国の人たちは冷静沈着でまじめなタイプが多く、それが地下での生活にも有利に働いたのでは、というのだ。
だとしたら、日本の人たちも同様の状況には強い、ということか。長引く不況によるストレスからうつ病になる人が続出している現状を見ると、とてもそうとは思えない。
では、どうして鉱山の彼らはあの限界状況に耐えられたのだろう。とくに、地上からは生存が絶望視されていた17日間、食糧なども乏しかった時期に、うつ状態やパニックにも陥らずに一致団結してすごせたのは驚異的だ。そこにはやはり、“ラテン系”といわれる前向きで明るい気質、そして信仰の力が強く関係していたのではないだろうか。
その前向きな気質や信仰が与えてくれたもの、それは「必ず助かる」という希望だ。「助からないはずなんて、あるわけないじゃないか!なんとかなるに決まってる」という信念と言ってもよい。そして、それ以上、あまり思いつめることもなく、ときには笑顔で“そのとき”をゆっくりと待つ。
最近、日本でもとくにビジネスの世界で、前向きな考え方が「ポジティブシンキング」などと言われて重要視されている。しかし、それは「ゆっくり待つ」とか「楽観的に信じる」とかいうことではなく、努力、競争するための動機づけのようなもの。その先にあるのは、「なんとかなる」ではなくて、「必ず大成功する」というゴールだ。
しかし、大成功を目指し努力し続けるための前向き思考は、疲れてくると次第に効力が薄れてくる。「絶対に1位になるという夢をかなえるぞ!」と力を入れすぎ、いつのまにか心身がすり減って、うつ病などに倒れることにもなりかねない。
チリの作業員たちはたしかにポジティブだが、それは人を蹴落とし、自分だけが勝ち残ることを目標にはしていない。「だいじょうぶ、きっとみんな助かるよ」というある意味で根拠のない楽観主義のようなもの。ただ、今回はそれこそが彼らを守り続ける原動力となったのだ。
「なんとかなるさ」という肩に力の入りすぎない前向き思考が、結局は人を救う。ここから私たちも学ぶべきことがあるだろう。
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