「こども園」導入、幼保が一斉反発(11月22日読売)
西日本新聞や北海道新聞などでは、保育制度の転換を問題視する声があることを伝える特集記事をみているものの、
三大紙などではなかなかお目にかかることができず。。。
そんななかでも、やっと。
11月22日、読売新聞が「一斉反発」と大きな記事を掲載した。
また、今週発売の週刊ダイヤモンドの「100職種 推定年収ランキング」では、
保育士83位328万円(公務員を除く)となっている。
これでいいのか。これをどうするのか、ということも新政権と保育関係者に問われている。
***
◇「こども園」導入、幼保が一斉反発
(2010/11/22読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/childcare/cnews/20101122-OYT8T00424.htm「財源も中身も不明」「親の意見も反映を」
政府が2013年度から幼稚園と保育所を統合した「こども園(仮称)」を導入しようと進めている議論が、関係者の反発を招いている。新しい制度の中身や財源が不透明なため、保護者の間にも不安が広がる。
政府は来年の通常国会への法案提出を目指すが、政権公約の「幼保一体化」は軌道修正を迫られそうだ。
政府への不信
今月17日、東京都心のホールに全国の私立幼稚園関係者2000人が集まった。
私立園の保護者と園長による恒例の大会だが、今年の最大の関心は政府が進める「幼保一体化」。異例の緊急アピールを採択し、「幼稚園と保育所を廃止して『こども園』に統合する方針は到底認められない」と政府批判を打ち上げた。
その前日、政府は「子ども・子育て新システム検討会議」のワーキングチームへ、「幼保を完全に統合する」という当初案に加え、両施設を存続させつつ「こども園」を増やす案など4案を提案。当初案で紛糾した議論の沈静化を図ったところだった。
だが、なおも反発の声は強い。
京都市から来た園長は「11月は幼稚園で入園募集する時期だが、『幼稚園はもうすぐなくなるんですか?』と保護者に尋ねられて困る」と話す。全日本私立幼稚園連合会副会長の北條泰雅さんは「これほど大幅な転換を短時間で決めようというのは、あまりに乱暴。統合となれば低い方の基準に合わせることになり、園庭の広さや幼稚園教育の質も守れなくなる」と憤る。
理念見えず
反発の背後には、幼稚園と保育所の担ってきた役割の違いがある。幼稚園関係者には「子どもを預かるだけでなく教育機関として役割を果たしてきた」との思いがある。保育所関係者には「福祉機関として子どもだけでなく家庭の支援をしてきた」との自負がある。
今月上旬、東京の区立保育園で保護者を集めた勉強会が開かれた。
「乳幼児の保育が営利ビジネスになる」と書かれたチラシを手に、講師役の保育士が公的保育の危機を訴えた。「新しい制度になると市区町村間で保育内容の格差が生まれる。株式会社を参入させるため、保育室の広さや保育士の配置を定めた基準も変わりそうだ」。説明を聞いていた母親たちは「保育の質の低下は絶対困る」と不安をもらした。
14日には、都心に各地の保育士や親子が集結。パレードもして「新制度はノー!」「国は保育に責任を持って」とアピールした。
公私立保育所が加盟する全国保育協議会の幹部は「待機児が増え、児童虐待が相次ぐなか、保育制度に転換が必要と感じている関係者はいる」と指摘。「だが、子どものため質の高い施設を作るという理念が見えないから、現場が不安を持つ」と話す。
数十年来の課題
混乱の原因には、設備や運営基準の違いもある。幼稚園で新たに3歳未満児の保育を行うには調理室の設置が必要で、数千万円の費用がかかる。本格的に保育を始めれば夏休みなど長期休暇も取れなくなる。
保育所で幼児教育を強化するなら、教員の配置や研修、運動場の確保といった課題がある。
親の立場を代表し、ワーキングチームに参加するNPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事の松田妙子さんは「断片的な情報が伝わり、保護者に不安が広がっている。でも、保育や幼児教育の数十年来の課題を解決して前進させるまたとないチャンス。当事者である親の意見を反映させた制度を作るべきだ」と話す。(生活情報部 榊原智子、小坂佳子)
幼稚園定員割れ 待機児童は増加
幼保の統合は長年の懸案だ。専業主婦家庭の子は幼稚園、共働き家庭の子は保育所という線引きが長く続き、所管も文部科学省と厚生労働省に分かれ、自民党政権時代には文教族と厚労族がそれぞれの業界の応援団となり、壁は崩れなかった。それが近年、少子化で定員割れの幼稚園が増え、都市部では保育所の待機児童が深刻化。統合を望む自治体が増え、06年に「認定こども園」制度が発足した。だが、「認定こども園」はひとつの施設の中に従来の幼稚園と保育所を併存させる形で、手続きなどが煩雑で、全国に532園(今年4月)しか広がっていない。
民主党は、幼保一体化で待機児童対策を進めると政権公約に明記。昨年末には緊急経済対策に盛り込み、保育サービスの整備に伴う保育士などの雇用拡大、女性の就労支援などを目指すことを明らかにした。
3年後の「こども園」実施に向け、政府は検討を加速させているが、ワーキングチームでは「財源は確保されるのか」との疑問も出ている。保育の利用者を増やし、質のいい幼児教育を提供していくには財源拡大が欠かせない。
待機児童の中心は0~2歳児。待機児童を解消するには、0~2歳児の受け皿を増やす必要がある。
ワーキングチームの委員でもある慶応大学の駒村康平教授は、「予算が現行のままでは、新しい仕組みを作っても保育の供給量は増えず、待機児童も解消しない。保育や教育の質の低下を関係者が心配するのは当然だ。国は1兆円程度の新たな財源を早急に示す必要がある」と話す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こども園(仮称)
教育施設の幼稚園と福祉施設の保育所の機能を統合した新しい施設として政府が導入を目指す。職員の資格も指針も料金体系も一本化する。幼稚園、保育所の制度の垣根をなくし、すべての子に幼児教育も保育も提供するのが狙い。現在ある「認定こども園」は、両施設の制度を温存したままで、職員の資格などに縦割りの制度が残る。
(2010年11月22日 読売新聞)
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