嫌悪の感情を乗り越えるということ
人に好き嫌いはある。
でも、嫌いな人、苦手な人でも、向き合わなければいけないことがある。
それを避けては、嫌悪の連鎖が広がっていくだけ。
私の仕事は、向き合わせること。
ここ数年、さまざまな経験のなかでそう感じるようになった。
どう向き合わせるか。
向き合わせないのは、解決・改善を遠ざけるだけになるということも。
もちろん、一時的に逃げることは必要でも。
嫌われることもある日々のなかで、マイナスの連鎖には悩まされつつも、プラスの好意の返報性(へんぽうせい)を大切に。
時に裏切られたり、期待が外れてしまうことがあったりしても。
***
◇しあわせのトンボ:何ちゃー生まれん=近藤勝重
(2010/11/12毎日新聞東京夕刊)
http://mainichi.jp/select/opinion/kondo/news/20101112dde012070056000c.html人を嫌うのは極めて強いマイナス感情だ。嫌えば嫌われるという言葉の通り、相手は仕返しの感情さえ抱くことがある。心理学では「嫌悪の報復性」と説明されている。
その報復行為はいかにすれば思いとどまれるのか。それが可能になれば、この世の中でのいさかいは激減するだろう。国家レベルにおいても争い事は減るのではなかろうか。
小料理屋での雑談が、日本と中国、ロシアとの領海、領土をめぐる対立模様の話から、人間の感情論になったところで、友人が言った。
「そうだよな。やられたらやり返すといった報復が続く限り、恨みを動機とした事件はもちろん、戦争だってなくならないだろうな」
人間の感情自体は緊張を緩和させる呼吸法とか、肩や首の筋肉をほぐすとか、あるいは何秒か間を置いてから発言するといったコントロール法が、人間関係を扱った本や雑誌の特集などで紹介されている。それらは単なる対処法でしかないものの、友人は多くの部下を抱えていることもあるせいか、「ほー、そういうもんか。いざという時はやってみるか」と関心を示す。戦闘的な文芸評論家として知られた中村光夫氏も、晩年は返答する時七つ数えてからにしていたそうで、その話にも友人は「七つか。それならできそうだ。試してみるよ」と笑った。
NHKの大河ドラマ「龍馬伝」で、坂本龍馬が倒幕にはやる連中を「憎しみからは何ちゃー生まれん」と言ってよくたしなめていた。ドラマでは龍馬の母の教えとされている。
友人は「母と言えば」と受けて、思い出すように言った。
「子供のころ、弟が近所のわんぱくに竹で頭をたたかれて大けがをしたんだ。母親は謝りに来たわんぱく坊主の親に『子供同士のこと。けがをさせようと思ってしたわけでなし、気にしないでください』と、とがめなかったんだ。それ以来、ぼくも弟もその子の親には本当によくしてもらってね。親同士も誰より仲のいいご近所になっていたよ」
嫌えば嫌われるという言葉に対して、思えば思われるという言葉がある。「好意の返報性」という。相手への好意はちゃんと返ってくるというわけだが、人間、プラスの感情よりマイナス感情のほうが強いのも確かだ。
嫌悪の感情が乗り越えられるかどうか。人間社会にとっての最大のテーマかもしれない。(夕刊編集長)
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