短く強い言葉の悪影響も
「殺す」が答えなどの出題、セクハラサイコロ・・・。この秋、明らかになったトンデモ授業が社会的事件として取り上げられている。
◇きょういく特報部 とまらない トンデモ授業 学校外の視点から3人に聞く
(2010/11/8 asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/tokuho/TKY201011080093.html
この記事中のうち、「サラダ記念日」で知られる俵万智さんの分析に共感した。教育分野だけでなく、言えることではないか。
■ワンフレーズ、悪影響 歌人・俵万智さん
一連の問題を起こした先生たちには、魅力的な授業を進める力が欠けていたと思う。子どもたちを授業の力で引きつけられないから刺激的な言葉を使ってしまったのではないか。近くでパンと手をたたけば誰でも振り向く。同じように無理やり引きつけようとしていた気がする。
刺激の強い言葉で人を引きつけるのは社会全体の風潮だ。テレビやネット、政治家まで、あらゆるところで短くて強い言葉があふれている。じっくり伝え合うのではなくワンフレーズで振り向かせる風潮が、教師にも影響を与えていると思う。
言葉が人の心にどう波及していくかという点に考えが至らない点も問題だ。先生の日本語力が落ちているのではないか。自分の言葉が人を傷つけないかを判断できるかどうかは、人間性にかかわる問題でもあり、教員採用までさかのぼる話だ。試験の成績だけでなく、これまで以上に人間的な観点という基準を加える必要がある。
先生と子どもの信頼関係の基本は、教科を自信を持って教えられることであるはずだ。面白さや人気だけでは、教室での信頼は築けない。
そのためには、先輩教師が後輩教師を育てる教育機能が学校に必要だと思う。私の教師経験は20年以上前の4年間だけだが、最も参考になったのは先輩教師の授業だった。どの授業も自由に見学できたので、特に1、2年目の頃は同じ教科の先輩の授業をよく見学した。同じ教材を使い、同じレベルの生徒を相手にどう授業を進め、どんな質問をして生徒の答えを引き出すのか。今日見たことが明日すぐ役立つ感じで、参考になった。
また、授業でオリジナルのプリントを作ったら、余分に刷って同じ教科の先生の机に置くのが恒例だった。教材を交換して参考にすると同時に、「このプリント、使わせて下さい」といったやりとりを通じて同僚とコミュニケーションをとるきっかけにもなった。
教員志望の人たちに大学で教えられる内容には限界があるから、特に新任の先生が魅力的な授業をできるようになるには先輩たちとの情報交換が大切だ。けれども先輩は多忙で新人を育てる余裕がなく、教育機能が働いていないのが現状のようだ。
先生にゆとりを持ってもらうには、1クラスの生徒数を今より減らすのが一つの方法だろう。予算がかかるとは思うが、教育にお金をかけることこそが国づくりのはず。子どもへの影響を考えれば、先生が疲弊している現状を改善することが急務だと思う。
◇
たわら・まち 早大時代に短歌を始め、高校教師だった87年、「サラダ記念日」が大ベストセラーに。著書に「かーかん、はあい 子どもと本と私」。47歳。
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