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2010.12.06

関心は尊重につながると信じたい 特別支援学校の今

私たちがほとんど見たことのないところ。

見ようとしなければ、それで済ませてしまうこともできる。

しかし、その現場で、教室と人手が足りていないという。

スペースが狭く、職員が少ない。

打てる手が限られるということになる。

私たちは、しゃがんでその矛盾に向き合うべきではないか。

「見えないことが無視につながり、逆に、関心は尊重につながる」

下記の報道にふれて、市民活動家の湯浅誠氏のスピーチの一節を思い起こした。

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◇特別支援学校の今:/上 教室が足りない 在学者増え特別室転用、カーテンで分割も
(毎日新聞 2010年11月21日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/health/fukushi/news/20101121ddm013100033000c.html
 障害がある子どもたちが通う特別支援学校で、教室不足が著しい。知的障害があると診断される子どもが増える一方、施設整備が遅れているためだ。各校とも、図書室などを普通教室に転用したり、一つの教室を分割して使う「カーテン教室」でしのいでいる。現状を報告する。【中西拓司】

 「ハンバーガーを下さい」「100円になります」。主に知的障害がある子が通う千葉県立富里特別支援学校(同県富里市)の中学部クラスで、生徒が買い物のやりとりの学習を始めた。図書会議室を転用した教室で、仮設の壁を設け別のクラスと共有しているので、隣の声が筒抜けだ。担当教諭(47)は「隣の物音で生徒の気持ちが散漫になることもある。本棚をロッカーにしているので、使い勝手も悪い」と話す。

 在校生は小中高等部で計249人。10年前の約1・4倍に上る。しかし校舎はほとんど増設されず、作業実習室など10の特別教室を普通教室として使っている。プレハブ教室ができた9月までは、音楽室も転用。音楽の授業時は、キーボードなど持ち運びができる楽器を普通教室に持ち込んでいたという。

 来年度以降も入学者が増える見込みで、綱渡りの状況が続く。高見沢健校長は「きめ細かく子どもたちをフォローするには120~150人程度が適当。もう精いっぱいだが、何とか受け入れていきたい」と話す。

   ◇

 東京都教育委員会が7月にまとめた調査によると、都内の特別支援学校に通う小中高生は09年度で1万110人だったが、15年度は推計1万2063人、20年度は1万2810人となる見通し。知的障害と診断される子が増える見込みのためだ。一般の小中学校に設置する特別支援学級でも、09年度1万1787人▽15年度1万6599人▽20年度1万7746人--で、右肩上がりだ。

 都立中野特別支援学校(中野区、児童・生徒328人)では、61学級中、22学級がカーテン教室だ。特別支援学校で国が定める学級編成は、小中学部で1学級6人、高等部で8人が基準。普通の学校に比べて少し狭めの教室をカーテンで区切り、2学級で分け合っている。木工室や美術室も、半分を普通教室に転用している。鈴木和彦校長は「広いスペースが確保できず、子どもたちの作業も限定せざるを得ない。就労教育に支障が出ることを心配している」と話した。

 なぜ自治体の施設整備は後手後手なのか。入学希望者がどこで増えるのか予測しにくいうえ、財政難も壁になっているとみられる。文部科学省施設助成課の担当者は「新設校設置は難しい。当面は廃校になった普通学校を特別支援学校にリニューアルするなどして対応せざるを得ない」と言う。(次回は12月5日に掲載)

 ◇教育への理解浸透、期待も大きく
 少子化なのに、なぜ在学者は増えるのか。

 国立特別支援教育総合研究所が昨年、全都道府県と政令指定都市の教育委員会に増加の理由を複数回答で聞いたところ、(1)特別支援教育への理解の浸透52件(2)特別支援学校への評価・期待45件(3)特別支援学級の増加34件(4)(発達障害などを診断する)医療の進歩23件--の順に多かった。これらの原因が複合している可能性がある。

 また、全国特別支援学校知的障害教育校長会に加盟する全国550校に聞いたところ、「教室が不足している」との回答は66%に達し、足りない教室は3884室に上った。「カーテン教室」がある学校は33%。特別教室の普通教室への転用は57%に上った。

 同研究所の井上昌士・総括研究員は「子どもの将来の就労を考える保護者が増え、一人一人の個性に応じた指導が充実している特別支援学校に期待が集まるようだ。子どもたちが安定して学校生活を送るために、普通教室の確保は緊急の課題だ」と指摘する。

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 ◇特別支援学校
 学校教育法改正に伴い、07年4月から従来の養護学校、ろう学校、盲学校が特別支援学校に一本化された。発達障害を含め障害があるすべての子どもを対象にしている。09年度の全国の特別支援学校在学者は11万7035人で、前年度より約4700人増えたが学校数は全国1030校で4校しか増えていない。
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◇特別支援学校の今:/下 教職員の不足も深刻
(毎日新聞 2010年12月5日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20101205ddm013100047000c.html
 ◇コーディネーター配置や研修機会確保に苦心
 障害のある子どもが通う特別支援学校で、在学者の増加による教職員の不足も深刻になっている。定員割れは33道県に上り、定員を満たしている自治体でも、教職員のスキルアップをどう図るかが問われている。

   ◇

 「家ではどんなことを話していますか。放課後の様子はどうですか」。長野市の県立長野養護学校(特別支援学校、約230人)で、中学部の女子生徒の保護者や担任教諭、放課後の学童保育スタッフらに、桜井清隆教諭(59)が話しかけた。

 どう接すればコミュニケーション能力を引き出せるのか、女子生徒にかかわる大人が集まって情報交換し、課題を考える「支援会議」だ。

 桜井さんはこの学校の「特別支援教育コーディネーター」。保護者の相談窓口となり、担任らに連絡をとって会議を進行する。コーディネーターは、07年度の特別支援教育発足で始まった制度だが、配置が義務づけられているわけではない。長野養護学校では、桜井さんを含め2人だ。教員自体が不足しているため、コーディネーターを配置するのもひと苦労だ。

 支援会議では、多くて1日3ケースを話し合うが、在学者が増えたため全員をフォローすることは難しくなってきた。桜井さんは「どう頑張っても子どもの4割が限界。態勢が手厚ければもっと目配りできるのだが……」と悩ましい様子だ。

   ◇

 文部科学省が、公立特別支援学校の教職員数(非正規含む)が法に定めた基準を満たしているか調べたところ、昨年5月時点で1800人が不足していた。33道県が未達成で、長野県が充足率ワースト1の79・37%だった。足りていたのは東京、大阪、愛知、神奈川など14都府県だった。

 長野県が今年5月に独自調査したところ、82・58%に回復したが、まだ343人足りない。「障害者への個別指導が重視されるようになってきたが、その流れに遅れた。一日も早く改善したい」と県の担当者は話す。

 特別支援学校の教員になるには、一般的な学校の教員免許に加えて特別支援学校の免許を取得することが必要だ。ただし、教育職員免許法の規定では、「当分の間」は特別支援学校の免許がなくても教員に就ける。文科省によると、特別支援学校に勤務しながらも免許がない教員の割合は25・8%に上る。

   ◇

 東京都は充足率105%だが、現場では教職員の質向上に苦心している。

 「好きな歌を歌うことを指導に取り入れてみては?」「もっと絵のカードを活用して、やりとりを増やせば?」。東京都立小岩特別支援学校(江戸川区)で、女性教諭(29)が知的障害のある小学1年生の個人指導のビデオ映像を映すと、同僚やベテランからアドバイスが相次いだ。

 学校では月1回程度、こうした「授業研究会」を開き、子どもとの効果的な接し方について話し合っている。教員は約50人で、平均年齢は都内の特別支援学校平均(10年度41歳)より約3歳若い。吉田真理子校長は「団塊世代のベテラン教諭の引退もあり、児童の増加に対応するには、恒常的に研修の機会を作る必要がある」と話す。

 増える知的障害への対応も急務だ。国立特別支援教育総合研究所の井上昌士・総括研究員は「大規模校はたくさんの教員を抱えているが、専門性を深めることがますます重要だ」と話している。【中西拓司】

 ◇充足率に疑問も
 文部科学省の「充足率」に疑問を呈する見方もある。

 元東京都立大総長で、桜美林大大学院の茂木俊彦教授(障害児教育)は「表面上は100%に近いが、非正規教員が充足率を押し上げている可能性がある」と指摘する。

 東京都教育委員会によると、都内の特別支援学校の教員のうち非常勤講師などの非正規教員は昨年度で3・4%。茂木教授は「特別支援教育の中身を充実させるために、正規職員の数を増やすべきだ」と話す。

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 ◇特別支援学校の教職員
 教職員の定数は、学級数や児童・生徒数、障害のタイプによって法律で基準が定められている。校長ら管理職を含む全国の教職員数は昨年5月で延べ8万9023人(非正規含む)。

 国立特別支援教育総合研究所のアンケートによると、全国550校の1校平均の教員数は77人。現場では障害別に担当が決まっており、知的障害4万2764人▽肢体不自由1万5357人▽聴覚障害5078人▽病弱3953人▽視覚障害3757人--の順に多い。

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