思いやり、前向きな言葉をかけて
「うざい」「きもい」
攻撃性を帯びた否定語が、電車内でも飛び交う。
喫茶店でも、交差点でも、心の中でも。
冷たい社会になってしまった。
そんな一場面をとらえて、極めて否定的にとらえる見方もある。
でも、そんなことばかりでもない。
ほほえましい光景や、ホッとした出来事も、私は伝え合いたい。
社会に対する否定的な批判ばかりでなく。
向上心を持ち合いながら。
相手を否定しあう傾向に違和感を持って、そんなことを考えた。
自戒をこめて。
***
○特集ワイド:親子の禁句 最悪、存在の否定 お互いを思いやり、前向きな言葉かけて
(2010/11/24毎日新聞夕刊)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20101124dde012040006000c.html
◇「信用しない」「産まなきゃよかった」<-->「うぜえなあ」
夫婦の間、職場での禁句があれば、もちろん親子の間でも言ってはならないことがある。特に親の心ない言葉は、子どもに自信を失わせてしまう。夕刊編集部が送る「禁句」シリーズ第3弾は「親子の禁句」です。【宮田哲】「あなたのことなんか信用しない」
夕方の渋谷駅前。東京都国立市に住む私立中学3年女子(15)は中2のころを振り返り「母からそう言われたことがあります」と言った。「試験勉強を頑張る」と約束し、母から没収されていた携帯電話を返してもらった。だが、携帯をいじり過ぎて、赤点。「信用しない」と突き放され、初めは腹が立ったが、そのうち、さみしさに襲われた。
「勉強しないと、どこにも入れないぞ」
千葉市美浜区の高校3年女子(18)は今夏、両親から言われた。まじめに勉強してきたが、両親が自室に来るのはなぜか息抜き中。「信じられてないんだ」と心に残った。
サントリーの調査(05、06年)で、小学4年~中学3年に「親は意見や考え方を聞いてくれるか」と聞いたところ「あてはまる」と回答したのは男子は小学生39・9%、中学生25・5%。女子は小学生54・3%、中学生40・4%だった。
フジテレビ系の人気ドラマ「フリーター、家を買う。」(毎週火曜夜9時放送)は、毎週のように父が子に厳しい言葉を投げる場面がある。「嵐」の二宮和也さん扮(ふん)する主人公はフリーター。うつ病の母を支えながら、アルバイト先での体験を通して成長していく。竹中直人さん演ずる父は息子に厳しい。
「いつまでも無職じゃ、おれも肩身が狭いんだよ」
カウンセラーとして二十数年、子どもや親に接してきた明治大の諸富祥彦教授(教育カウンセリング学)の言う「子どもに一番ダメージが大きい言葉」は何か--。
「あなたなんか産まなきゃ良かった」
千葉県松戸市の高校2年女子(16)は父から「生まれてこなければ良かった」と言われた。父から話しかけられ、生返事していたら激高された。「一時的かもしれないが、ショック。ずっと心に残っている」。父母の離婚話で母の側についた時のこと。
「お前たちのせいでやりたいことができなかった」
東京都江東区の高校2年女子(17)も同じような言葉を母親から浴びせられた。「お互いカッとなっていたけど言い過ぎ」
諸富さんは説明する。
「自分の存在を全否定されることになる。私がカウンセリングしたケースでもこの言葉がきっかけで、リストカットや家出を始めたケースが多い。否定的な言葉ばかり言われると子どもは自分を否定し、自分が不幸になることばかりくり返すようになる」
並んでダメージが大きいのは兄弟姉妹と比べること。「兄弟姉妹は親から存在価値を肯定されたが、自分は否定されたと感じる。人生に強烈に影を落とす」(諸富さん)
「お姉ちゃんなんか相手にするのはやめなさい」
大田区の高校2年女子(17)は「私と妹の口げんかが激しくなった時、母が妹に言った。私が下に見られているようでぐさっときた」。
親が兄弟を引き合いに出すのは、発奮材料にするためではないのかと思うが、背景に兄弟姉妹のどちらかがより可愛いという思いが出て子どもは敏感に感じる。
また、世田谷区の中学2年女子(14)は実力テストで80点台を取ったのに、母にこう言われた。
「もっといい点取れたんじゃないの」
諸富さんは「プロセスを認めず、結果しかみないと子どものやる気がなくなる。勉強時間が1時間増えたら、いつか結果が出ると励ますのがあるべき姿です」。
世田谷区の高校1年男子(16)は中3だった昨年、母親から何度も言われた。
「入学試験に落ちたら家を出ていってくれ」
言われるのはいつも食事後、テレビを見ている時などだ。「合格しないといけないとショックでした」
諸富さんは「勉強時間が約束より短かったなど、ささいなことで『出ていってくれ』と怒鳴る親があきれるほど多くなった。小さな虐待みたいなもの。ためらいなく子どもに『ばか』と繰り返す親も増えた。現代人は感情の『ため』が利かなくなった。親も自分の否定的な感情が抑えられないで、そのまま子どもにぶつける。子どもの心のダメージは大きく、自分は親から愛されていないと感じて、人生全体がねじ曲がる子どもがたくさんいる。親の言葉で、自分が嫌いとか、どうせ自分は駄目と思っている子は多い」
では子から親への禁句は? さいたま市浦和区の会社員、小島和之さん(48)は数年前、高校3年の長女に「勉強はやってるか」と聞いた。
「うぜえなあ」
小島さんは「人をばかにするな」と使う度に注意。言わなくなったという。諸富さんは「子どもたちは『死ね』や『殺す』をしょっちゅう使う」。かつての「うるせえ、このばばあ」が「殺すぞ、この野郎」に変わったそうだ。だが、これで親がカッとなると言葉の応酬になり、言葉がエスカレートすることもある。「親が同じように切れるのではなく、『使ってはいけない言葉』と冷静に諭すべきだ」
親子のコミュニケーション方法を学ぶ「親業訓練」の指導員を養成する「親業訓練協会」(東京都渋谷区)のシニアインストラクター、瀬川文子さんは「主語をあなた(子ども)から私(親)にすれば、子どもも親の考えを理解しやすい」と話す。
例えば、子どもが大音量で音楽を聴き、壁を隔てた隣室で読書していた親は集中できなかったとする。「(あなたは)音を小さくしろ」と命令しても、子どもは事情を知らない。「(私は)読書中。音楽が気になり、集中できなくて嫌になる」と言えば、子どもは考えるようになる。
「訓練に参加する母親は、子どもを自分の思い通りに動かしたい人が多い。しかし、必要なのは分かり合うこと。魔法の言葉はありません」
親子関係をよくする「簡単な」方法はあるのか。「『ごめんね』『お願い』『ありがとう』『あなたのこと信じてる』。肯定的な言葉を使えば家庭が温かくなり、人生変わります」と諸富さん。
松戸市の女子高生がうれしいのは母からのメールだ。
「だいすきだよ」
赤点を取った国立市の女子中学生が成績を100番以上上げた言葉はコレだった。
「今回はちゃんとできると、信用している」
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