小さなサンタクロースの贈り物
名古屋の街に、小さなサンタクロース。
記事中の写真がとてもかわいい。
「自分にできることはあまりに小さい」と迷いもするサンタクロースのお父さん。
おにぎりを結び、おにぎりが結ぶもの。
そのエピソードと読者を結ぶ記者。
縁や網がほどけつつあるこの社会。
小さなサンタクロースが私にくれたものは、おにぎりではない。
なかなかかみくだけず、飲み込めない、形のないもの。
かみしめないと。
思い悩んで新聞を手にすると、
「個」を求め、「弧」に向き合う、「弧族」の時代。
朝日新聞が「弧族の国」という特集を始めた。
年の瀬に考えるテーマは、切なく身にしみる。
※下記は「弧族の国」特集の記事ではありません。
***
◇おにぎり親子、寒空の贈り物(2010/12/25 asahi.com)
http://www.asahi.com/national/update/1225/NGY201012250023.htmlクリスマスの電飾がまばたく名古屋市・金山駅前に25日夕、おにぎりを抱えた幼い女の子が立っていた。近くに住む会社員松本隆さん(38)の長女、照玲紗(てれさ)ちゃん(3)。隆さんと一緒に、駅周辺にいる路上生活者たちにおにぎりを届け続けている。ある路上生活者とのふれあいをきっかけに始めて2年近く。もう2千個以上を配った。
日没後、気温は4度を切った。ビルの間に夜風が抜ける。親子はこぶし大のおにぎりを持って周囲を見わたした。「あっ、いたいた」。交差点の向こうに「リュックのおじさん」の姿が見えた。
照玲紗ちゃんが近づいて「はい、どうぞ」とおにぎりを手渡す。おじさんは「いつもありがとう。風邪ひかないようにね」と声を絞った。
缶拾いのおじさん、公園のおばさん……。いつも、決まった4人に二つずつ渡す。みな高齢やけがで職にあぶれ、缶拾いや雑誌の立ち売りで生活をつないでいる。隆さんは「昨日は寒かったでしょ?」と話しかけ、体調やけがの具合を気遣う。
リーマン・ショック直後のころ、隆さんは駅近くの軒下に暮らす男性が気になっていた。耳が不自由で、ほおの肉はそげ、歯は1本だけ。「何か手助けがしたい」。奉仕活動に関心のあった隆さんは家族と相談し、「無理がない」と考えて、おにぎり届けから始めることにした。
それから、仕事帰りや休日を使って照玲紗ちゃんと、「いつものおじさん」と呼んで、その男性のもとに通った。ふだんは口の重いおじさんも、照玲紗ちゃんを見ると顔をクシャクシャに崩した。ジャンケンを教えてくれたおじさんへのお返しに、照玲紗ちゃんはあめ玉をプレゼントした。「これをなめたら、歯がでてくるよ」
猛暑日が続く今年7月下旬、いつものようにおじさんに声をかけたが反応がない。額に脂汗を垂らしてうなだれ、会話できずに別れた。2日後、隆さんは別の路上生活者から告げられた。「救急車で病院に運ばれて、それきりだよ」。名前も年齢もわからないままのふれあいだった。
照玲紗ちゃんは今でも、あの軒下を通るたび思い出を口にする。隆さんはおじさんを支え切れなかった現実に「自分にできることはあまりに小さい」と迷うこともある。
おにぎりを渡し終えた帰り道。照玲紗ちゃんは冷たくなった指で隆さんの手をつかんだ。「パパ、おうちに戻ったらお風呂に入ろうね」。うなずきながら、隆さんは思う。
また、明日も行こう。(乗京真知)
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