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2011.01.16

昨夏の児童虐待死と「タイガーマスク」現象から、希望を見出すために

昨夏の痛ましい児童の虐待死、そして今回の「タイガーマスク」現象。

この2つをあわせて考えることができないだろうか。

憲法は権利を掲げ、国をしばっている。

私たちはその権利のもとに生きていく。

その権利を具体的に裏づけるのは法律。

憲法、権利、法律の関係性をこのようにとらえたときに、

子どもたちの権利と私たちの果たすべき役割をどうとらえるべきか。

以下のコラムをぜひ読んでほしい。

***
記者の目:住民票移さぬ「消えた」子どもたち=平野光芳
(2011/1/14毎日新聞「記者の目」)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110114k0000m070129000c.html
 住民登録地に住んでいないので行政が安否を確認できない。基本的な行政サービスも受けずに親と各地を転々とする。そんな「消えた子」の実態を昨年夏から追ってきた。毎日新聞が全国主要74自治体を対象に行ったアンケートでは、出生届が出ているのに乳幼児健診を受けず、行政が安否や所在を確認できない乳幼児(0~3歳)は延べ355人。「見えない」イコール「問題がない」と行政に軽視されがちな実態も浮かび上がった。虐待や貧困、ドメスティックバイオレンス(DV)などの深刻なケースも多いだけに、住民登録地から「消えた」といって、問題まで「消す」ことは許されない。

 「消えた子」について本格的に取材するきっかけは、昨年7月末に大阪市西区のワンルームマンションで発覚した2幼児放置死事件だった。風俗店従業員のシングルマザー、下村早苗容疑者(23)は、6月上旬から長女羽木(はぎ)桜子ちゃん(3)と長男楓(かえで)ちゃん(1歳9カ月)を自宅に放置したまま2カ月近く帰らず、衰弱死させたとして殺人容疑で大阪府警に逮捕された。下村容疑者は調べに「育児が嫌になった」などと供述した。放置している間も知人らと遊んでいたという。

 親子が住んでいたのは、風俗店が従業員用に借り上げたマンションで、下村容疑者はここに住民票を移していなかった。昨年3~5月には住民から児童相談所に「子どもがほとんど毎日、『ママー、ママー』と泣き叫んでいる」と3回通報があった。だが、児相が区役所に照会しても住民登録はなく、数回家庭訪問したが、不在のため居住の事実すら確認できなかった。「いないだろう」と判断され、救いの手は届かなかった。

 ◇虐待事件報道で居場所を知る 
 三重県四日市市出身の下村容疑者は09年5月に離婚し、6月に同県桑名市役所に転入届を出している。その際、職員の案内で、児童手当と、一人親家庭に支給される児童扶養手当の窓口を訪れた。申請に必要な所得証明書類がなかったため、後日、再申請するようアドバイスされたが、下村容疑者が再び窓口を訪れることはなかった。

 市は9月に申請を促す通知を郵送したが、宛先不在で返送され、訪問した民生委員も居住を確認できなかった。昨春には、楓ちゃんの1歳6カ月健診の通知を郵送したが、これも返ってきた。携帯電話も通じず、市の担当者が下村容疑者の居場所を知ったのは、「逮捕」を報じるニュースでだった。

 下村容疑者は09年8月には名古屋市におり、昨年1月には大阪に転居した。桑名市子ども家庭課の高木守課長は「現在の仕組みでは、居場所が分からなくなった親子を行政が捜し出すのは難しい。どうしたらいいか手探り状態だ」と話す。

 「消えた子」や悲惨な虐待事件を報道すると、読者から親を批判する意見が多く寄せられる。「あまりの無責任さに憤りを感じた」「行政の責任だけではなく、親の人間性の問題が大きいと思う」といった声だ。こうした非難は当然だが、親の「モラル」や「母性」を叫ぶだけでは問題は解決しないというのが取材での実感だ。

 「解決したと心から納得できるケースは一つもない。経済面や仕事、家庭など環境を何とか変えて少しずつ改善させているのが現状だ」。近畿のある市役所で、虐待してしまう親を支援している女性職員の言葉が忘れられない。

 ◇官民が持つ情報交換の仕組みを
 長年にわたって染みついた親の考え方や行動を変えるのは非常に難しい。もちろん変える試みも大切だが、その間に子どもはどんどん成長する。「悪い親を持った」と見捨てるわけにはいかない。であれば、子どもを支える社会のシステムが必要だ。

 例えば、発育状況を確認する上で重要な乳幼児健診で、受診しなかった子のフォロー態勢には、何度も家庭訪問を試みる自治体がある一方で、電話や郵便だけの自治体もあり、その差は大きい。自治体が果たす最低限の役割を国が指針として示すべきだ。

 子どもを捜す仕組みの全国的な体系化も求められる。各地の児童相談所は、虐待に絡む行方不明の子どもの情報を「CA(Child Abuse=児童虐待)情報」として相互に交換しているが、ファクスのやりとりだけという。住民基本台帳とも照合しながら捜し出すコンピューターシステムの構築が必要だ。警察はもとより、携帯電話や電気、ガス会社などとも連携できないか、研究してほしい。

 「国及び地方公共団体は、保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」。児童福祉法はこううたう。この精神を今一度、確認したい。(大阪社会部)

***

そして、「タイガーマスク」現象にみられる善意の連鎖。

下記に紹介する東京新聞の記事のとらえ方がスッキリ。

***
【私説・論説室から】広がる善意 読者からも
(東京新聞2011/1/13)

 全国各地の児童養護施設などに、かつての人気漫画タイガーマスクの主人公「伊達直人」などを名乗る人物たちから、ランドセルなどが届けられています。現金や図書券、文具や玩具のほか、野菜などの食料が届けられるケースもあり、善意の連鎖が起きているようです(十二日付社会面)。

 恵まれない子どもたちに何かできないか、少しでも人の役に立ちたい…。寄付を思い立った動機は人それぞれでしょうが、善意の輪が広がってゆくこと自体は歓迎すべきことだと思います。世の中まんざら捨てたもんじゃない、という気がしてきます。

 ただし、市井の人々の善意は善意として、政治や行政は手をつくしているのか、という疑問が頭をもたげます。こちらが本題で、今回の善意の連鎖はそのことを浮き彫りにしたのでは、と思えてなりません。

 善意といえば、一日から社会面で連載した企画「子ども貧国」にも読者から温かい支援の申し出がありました。特に六日付の連載五回目「夢への借金」。生活苦の中、国立大の医学部を目指す岐阜県の高校三年生美香さん(18)に対して、読者から「(もし受験地が東京であるなら)わが家に宿泊してください、と伝えてほしい。部屋を用意しますので」(都内女性)、「涙が出た。受験に必要なお金を少しでも援助したい」(埼玉県女性)などの声が届いています。 (T)
***

「政治や行政は手をつくしているのか」という疑問に共感を、1月1日から9日続いた連載「子ども貧国」にかかわる「善意」の広がりに感動を覚えた。その善意は、社をあげた記者たちの心を寄せた取材と実態を浮き彫りにしたペンの力、そして「貧国」を変えたいと取材に応じた当事者・仲介者の勇気と決断によって生まれたもの。

この国、棄てたもんじゃない。確かな希望が見えてこないか。

児童虐待死も「タイガーマスク」現象も、「国及び地方公共団体は、保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」という児童福祉法を掲げて、とらえあいたい。

その国、自治体の無策や失態が続いても、「政治はあてにならない」とあきらめてはいけない。

あきらめは、厳しい状況の子どもたちの希望を否定することにつながる。

そしてその責任のカケラを持つ私たち大人一人ひとりにできる「普段の努力」と、つながりとしての「不断の努力」を重ねあわせ、事態を改善させていく道を探り、前へとすすみたい。 

私たちは、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を持ち、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(憲法第25条)というなかで生きている。

そして、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」(憲法第12条)とあるのだから。

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コメント

全国に広がる“タイガーマスク”現象―【私の論評】この現象は、財務官僚が財政民主主義的立場を堅持することから、やむなく発生したきたものという見方もできる?!

ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」

こんにちは。このタイガーマスク現象、確かに良いことであり、善意の人々が、善行を行うことに対して、私は何も反対するものではないし、非常に良いことだと思います。しかし、私はなぜか、これに対してしっくりこないところがあります。なぜなら、まるで風が吹くと桶屋が儲かる式の論法になってしまいますが、あの、「タイガーマスク現象」が、何と、財務官僚の財政民主主義立場を堅持することから、やむなく発生したきたものという見方もできるからです。詳細については是非私のブログを御覧になってください。

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