感謝の思いを胸に 全員でまたグラウンドへ
ひとつのことが注目される。
そのことを象徴として、まわりのことを想像できるか。
とても大切な視点だと思う。
春のセンバツ甲子園では、被災地・東北高校の奮闘ぶりに全国的な感動が広がった。
私もそのひとり。
でも、あわせて考えたいのは、その東北高校を追いつけ追い越せでがんばってきた高校球児のことも。
昨夏の宮城大会でその東北高校を破って初めて決勝に進出した気仙沼向洋(けせんぬまこうよう)高校のことが、愛読紙・日刊スポーツで取り上げられていた。
このような報道を待っていた。
あきらめない心と感謝の気持ちで、被災後の初練習、キャッチボールが。
他の2校との合同で、力をあわせて。
このがんばりがまた、ライバル校の球児の力にもなるはず。
本当のスポーツの魅力を発信するスポーツ新聞の姿がここにある。
高校野球と直接関係のない私も励まされるのだから。
***
◇気仙沼向洋 友情ボールでまた野球を
(2011/4/11日刊スポーツ)
http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/p-bb-tp3-20110411-759585.html
昨夏の高校野球宮城県大会で準優勝した気仙沼向洋高が10日、東日本大震災の被災後初の練習を気仙沼西高、本吉響高と合同で行った。自主参加だったが、3校合わせて31人が集まり、ノックや打撃練習に汗を流した。海沿いにある気仙沼向洋高は、校舎が壊滅的なダメージを受けたため、新学期は学科ごとに県内の3校(本吉響高、気仙沼西高、米谷工業高)に分かれて授業を行う。校舎の復旧のめどは立たず、今後、全員が集まって練習できるかも分からないが、県立の星が復興への第1歩をスタートさせた。
選手らは久しぶりに白球を追い続けた。グラブにうまく収まらず、バットにも思うように当たらない。だが、被災前まで当たり前だった感触が、とても懐かしかった。気仙沼西高のグラウンドで約3時間、かみしめるように体を動かした。
気仙沼向洋高の川村桂史監督(37)は「今後どうなるのかという、子どもたちの不安を取り除きたかった。来られる子だけでもいいから、動いてみよう」と、8日の生徒集合の際に選手へ呼び掛けた。部員24人中18人が顔を出した。気仙沼西高の小松英夫監督(44)、本吉響高の小野寺三男監督(44)とともに、3校計31人を指導。他校の厚意で送られたボールやグラブ、ウエアにも助けられた。
3月11日の地震発生時、気仙沼向洋高は打撃練習中だった。左翼付近が地割れし、膝の高さまで水が噴き出した。部室にあった財布や携帯電話を取りに戻る時間もなかった。しかし、練習着で避難する選手の多くが、グラブを脇に抱えていた。「みんな自然に持っていたと思う。他は全部流されましたけど」と三浦岬(みさき)主将(3年)。三浦主将は実家が流され、避難時と同じ格好でこの日の練習にやってきた。離島の大島から2時間かけて来た部員もいた。
がれきの山となった町を見れば「野球をやっていていいのか」という気持ちにもなる。しかし、仲間が折れかけた心を支えてくれた。昨夏の宮城大会で部史上初の準優勝。準決勝で破った東北が今春のセンバツで戦っていた。「自分たちも力をもらった。(野球ができないと)諦めそうになった時もあったけど、自分たちが諦めたら、亡くなった方や、もっとつらい思いをしている方に申し訳ない。全力疾走や声で励みにしてもらえるように」と野球ができる感謝の思いを胸に、できる限りのことをすると決めた。
校舎の損傷が激しいため、21日の入学式と始業式の後、選手は学科別に県内の3校に分かれて新学期を迎える。市外の学校に通う生徒もおり、全員が集まって練習することは困難だ。今後の見通しも立たないが、三浦主将は「時間があったら体を動かすとか、避難所ででもいいと思う。支援してくれる人に恩返しできるようなプレーをしたい」と、全員でグラウンドに立てる日を信じている。
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