響かなかった声 5歳の犠牲を忘れない
埼玉の春日部市で生まれ育った男の子が5歳で亡くなった。
生を受けて両親がすぐに離婚。
父親に引き取られ、父の弟と3人暮らしの家は、ごみ屋敷になっていった。
3歳での体重は通常の発育の数値だったというが、トイレもしつけられておらず、ずっとおむつをはき、
食事はコンビニで買って与えられるパンなどの1日2食に減っていき、お風呂は月1回程度。
保育所をすすめられても断り、今年八月の死亡時、5歳にもかかわらず、体重は平均の半分の10キロに減っていたという。
事件後、父も弟も、児童養護施設で過ごしたという過去も明らかになった。
11月は、児童虐待防止月間。
今日11月16日、『週刊少年サンデー』で、「ちいさいひと 青葉児童相談所物語 震災特別編」の連載(5回)が始まった。
子どもをめぐる厳しい状況に向き合う児童福祉司を主人公に描かれ、今回は宮城県石巻市の「その時」を。
昨年この時期に掲載された「ちいさいひと」は11月18日に単行本化される。
最近、子どもの貧困や虐待問題が丁寧に報道されなくなっているように感じる。
あの子は、おなかいっぱいおいしいごはんを食べることが何度できたんだろうか。
ひとつできるようになったことを、何度ほめてもらえたんだろうか。
抱きしめられ、親のあたたかさを何度感じることができたんだろうか。
親以外のおとなや友達を、何度認識できたんだろうか。
泣き叫ぶことで叱られて、虐待されて・・・。
行政は2歳の時からネグレクトの疑いを認識し、訪問が重ねられてきたのに。
その声は密室で響くだけで、おとなの心に響くことはなかったんだろうか。
響という名前で生きた5年間。
首相や厚生労働大臣、各党党首はもっともっと、「子どもを大切にしよう」というメッセージを発してほしい。
そして、私たちはもっとまわりのちいさな声に、声にならない声に耳を、
短い期間にちいさくしか伝えられない記事に目を。
経過を知り、原因を探り、それらの背景を想像しながら、自分で消化せず、誰かにその思いを語り、伝え、広げていかないと。
黙っていたら、変わらない。
現状が追認されていく。それだけは避けたいと思うから。
【関連報道】
虐待、なぜ防げなかった 埼玉・春日部の5歳男児衰弱死
(2011/11/16asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/kosodate/news/TKY201111160299.html
春日部・5歳死亡 狭い部屋に閉じ込め(東京新聞埼玉版2011/11/16)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20111116/CK2011111602000059.html
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