鬼ごっこの異変
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発信箱:鬼ごっこ=落合博
(2011/11/17毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20111117ddm004070011000c.html
ぶどう畑や田んぼが広がっていた子どものころ缶けり、かくれんぼ、馬乗り、鬼ごっこなどで遊んだ。学校での子どもの骨折が増えているのはそんな「伝承遊び」がほぼ消滅したこととも関係しているようだ。昔の子どもは遊びを通して自然と体の動かし方を身につけていたということか。
最近、運動が得意な子どもも苦手な子どもも誰でも簡単に楽しめる遊びとして鬼ごっこに注目が集まっている。確かに走る、止まる、方向転換する、よけるなど多彩な動きが詰まっている。学習指導要領は小学校の体育の教材として推奨する。
その鬼ごっこに異変が起きている。
先週末の日本スポーツ教育学会で、福島県内のある村立小学校の教頭が「震災地での学校体育復旧の現状」と題して報告した。福島第1原発事故の影響で校庭に出られない、出る場合にも時間制限がある。体育館は避難所になっていて長期間使えなかった。夏場は水泳の授業ができなかった。教育委員会などがプールの安全を宣言しても、保護者の安心は得られなかった。
5カ月ぶりとなる体育の授業を体育館で実施したときのことだ。鬼ごっこで顔と顔をぶつける子どもたちがいた。目の前に迫った相手との距離感がつかめず、かわすことができなくなっていた。サイドステップでは止まることができず、転倒する子どももいた。動きたいときに動ける身体、つまり運動感覚を形成するうえで、学校体育が果たす役割の重要性を改めて知った。
身体活動ができないストレスを抱える子どもたちを前に福島の先生たちは悩みながら奮闘している。原発事故が収束しない限りはこの状況は変わらない。教頭は「子どもたちが20歳を過ぎた時にどんな影響が出るのか」と言う。向き合うべきは、被ばくの問題だけではない。(論説室)
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最近のテレビ報道を見ていると、放射線の数値に重きが置かれている。
当然だとは思うけれど、上記のように、その数値の周辺で起きていること、子どもたちへの影響がもっと掘り下げられ、考えられるべきではないだろうか。
文化を自然に失いつつあるのではなく、今回は「人災」で、伝承遊びが消えかけて。
身体を動かさせないということの意味は。
たかが、されど、鬼ごっこ。
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