総合こども園、待機児解消は不透明
1月20日、保育制度「改革」の位置づけで、戦後ずっと継続されてきた制度を転換する政府案が示されたという。
毎日新聞は「保育所待機児童問題の解消策になりうるのかは不透明なまま。利用料などの詳細は関連法成立後に持ち越され、保護者の不安は消えていない」と指摘する。
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◇幼保一体化:総合こども園、待機児童解消は不透明 利用料未定、保護者の不安消えず
(2012/1/21毎日新聞)
http://mainichi.jp/life/edu/news/20120121ddm002010096000c.html
政府は20日、税と社会保障の一体改革で打ち出した新たな子育て政策「子ども・子育て新システム」の最終案を公表した。15年度をめどに、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「総合こども園」をスタートさせる方針を盛り込み、幼保一体化の議論はひとまず決着した。しかし、2万6000人に及ぶ保育所待機児童問題の解消策になりうるのかは不透明なまま。利用料などの詳細は関連法成立後に持ち越され、保護者の不安は消えていない。
新制度のモデルになるのは、06年10月に発足した現行の幼保一体施設「認定こども園」だ。保育所と幼稚園を統合した東京都新宿区の区立四谷子ども園。遊戯室で5歳児約50人が歌や劇の練習にはげむ横で、ベテラン保育士の芦野美樹副園長は「幼稚園には遊戯室もピアノも潤沢な教材もある」と、保育に幼稚園の利点を生かせる魅力を語る。
しかし、厚生労働、文部科学両省が別に補助金を出す同園の新設は、両省への手続きが必要など煩雑で、全国に762カ所しかない。その点、新制度では内閣府の補助金に一本化される。約2万3000カ所の保育所、約1万3000カ所の幼稚園が総合こども園に移行すれば、多くの子どもが保育と幼児教育を受けられる、というのが政府の説明だ。
それでも、利用者は子どもを預けられない状態の解消を強く望んでいる。足立区の女性(27)は2歳の長男の受け入れを断られ、夫の帰宅後、深夜0時から朝6時までコンビニエンスストアで働く。待機児童の多い都市部の保育所では、フルタイムで働く親が優先されがちだ。
新制度では短時間労働の人にも保育の権利を保障するとしている。だが、総合こども園は、幼稚園から移行する施設の不安に配慮し、0~2歳児の預け入れを義務づけていない。待機児童の8割は3歳未満とあって、東京23区のある担当者は「総合こども園では待機児童問題は解決しない」と言い切る。
さらに、こども園の利用料など保護者が最も知りたい部分の詰めは今後となる。足立区の女性は「高収入の正社員しか利用できないなら意味がない」と懐疑的。基準を満たせば株式会社も参入でき、今の認可外施設も補助の対象となるものの、「質」を担保する基準作りさえこれからだ。【山崎友記子】
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ほとんど内容が知らされないどころか、「詰めは今後」だとすれば、「改革」とは名ばかりと批判が高まるのは当然だ。
知らせる努力を怠っているのが政府・民主党。
ビフォー・アフターがどのようになるのか。
かつて「100年安心」とうたった年金「改革」で、内容に偽りありだったが、長編マンガでその素晴らしさを訴えたのは公明党だった。
どこをどう変えて、どうなるのか。
そしてそのどこに問題があって、どう評価するのか。
違う道はないのか。
この新たなシステムに懸念や批判を持つ保育関係者にも、その発信力が問われている。
自戒を込めて。
この記者は、昨年7月21日の同紙「記者の目」で、自治体の判断で子ども一人あたりの保育所面積の国の基準を切り下げてもいいとする、政府の基準緩和方針を「禁じ手」だとして厳しく批判した。
その後も丁寧な取材がされているように感じる。
「読者の目」も問われる。
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